こんにちは。
水墨画アーティストの八束徹です。
鶺鴒鳴(せきれいなく)とは、
鶺鴒(せきれい)が鳴き始めるという意味です。
セキレイは、市街地でも
よく見かける野鳥です。
この時期に限らず、一年中いますよね。
そんなセキレイは神様に
「子孫の残し方」を教えた鳥なのです。
とはいえ、一体どうやって
その方法を教えたのでしょうか?
この記事では、その鶺鴒鳴、
今回描いた水墨画、
について話していきます。
9月12日から9月17日頃の七十二候は、
白露次候 鶺鴒鳴(せきれいなく)です。
二十四節気では、白露(はくろ)。
その白露を3つに分けたうちの2番目(次候)です。
目次
「恋数え鳥」セキレイが神様に教えた子作りの方法とは?|鶺鴒鳴(せきれいなく)
愛を繋いだ御神鳥
セキレイは、現代では
時期問わず生息している鳥ですが、
「チチチチ」と鳴くその甲高い声は、
この秋の澄み切った空へと
より一層響き渡るようになります。
セキレイは、別名、
「恋教え鳥」とも呼ばれています。
日本神話の中でセキレイは、
イザナギ(男の神)とイザナミ(女の神)に、
「子作り」の方法を教えた鳥です。
イザナミは、日本という国を産み、
さらにそれを統一した
全ての神様の母です。
その神に子作りを教えたわけですから、
まさに御神鳥ですね。
ちなみにどうやって教えたかというと、
そのふたりの神の前に降り立って、
その尾を上下に振ったそうです。
なんだか可愛いですよね。
「恋」というか、ほぼ下ネタですけど、
小鳥がやるとほんわかしてて許されそうな。
この動作はセキレイの習性です。
その神話から、セキレイは
婚礼行事にも関わり合いが深く、
皇室でも婚礼時には、
二人の新しい寝床に
セキレイの置き物を置くそうです。
皇室は日本神話から始まっていますからね。
日本で見られるセキレイの種類
日本で見られるセキレイは3種。
ハクセキレイ、
キセキレイ、
セグロセキレイです。
ハクセキレイの特徴は、
お腹が白いこと。冬に冬羽に変わると、
その色は黒から灰色になります。
人に対する警戒心が低いため生活圏が広く、
水辺だけではなく、
都市部にも生息しています。
そして平気で人の近くに来ます。
街中でよく見かけるのは、
たいていこのハクセキレイです。
キセキレイの特徴は、
お腹が黄色いこと。
市街地の水辺などにもいますが、
こちらは人に対する警戒心が高いため、
ハクセキレイのように
街のあちこちで見かけたり、
人間のそばに来たりはしません。
セグロセキレイの特徴は、
ハクセキレイと比べて、
目の周りや頬まで黒く、
冬羽も黒いままです。
日本にしかいないとされてきましたが、
今では日本近辺の国の沿岸部
(ロシアや中国・韓国など)でも
冬鳥として見られるようになりました。
セキレイはそれぞれ棲み分けているので、
ハクセキレイが棲んでいるところに、
キセキレイがいるということはありません。
いるとしたら、縄張り争いをしている時です。
セキレイは元々冬鳥で、
時代に沿って、南下してきた野鳥です。
セキレイが全国で見られるようになったのは、
昭和になってからであり、
本朝七十二候(中国から伝わった
七十二候を日本の気候に合わせて
作り直したもの)ができた江戸時代では、
まだまだセキレイは北国の鳥。
江戸の都でセキレイの鳴き声を聞けるのは
秋が訪れて風が冷たくなり始めた、
今ぐらいの時期だったということです。
【作品紹介】水墨画で七十二候を描く|鶺鴒鳴(せきれいなく)
今回は水辺のハクセキレイを描きました。
これは、尻尾から濃墨のかすれ筆で描いて、
そのまま羽根、体の模様を描き、
中墨でお腹や胸の部分を足して
全体の形をとってから、
頭や胸の輪郭を線でさっと描いて、
最後にまた濃墨で、
クチバシと両脚を描いています。
頭部は白抜きです。
その後、砂利、草、
水の波紋を足元に広げました。
過ぎゆく夏の狭間で
土手から見渡す風景。
水辺で戯れるハクセキレイ。
そんな情景が浮かべば幸いです。
空気が冷え込むようになってくると、
ふと寂しさが沸き起こり、
人恋しくなることがありますね。
ギュッと胸を突いてくるのは、
ひょっとしたら恋心でしょうか。
この秋空の下に高く響く
セキレイの鳴き声は、
もしかしたらそんな恋の後押しを
してくれているのかもしれません。
まとめ
今回話したのは、
- 七十二候・鶺鴒鳴
- 水墨画で描いた鶺鴒鳴(せきれいなく)
についてでした。
次の七十二候は、
白露末候 玄鳥去(つばめさる)です。