こんにちは。
水墨画アーティストの八束徹です。
これから紹介する
5つのテクニックを使うことで、
その絵は表現の幅、深みを広げて
たくさんの違った表情を
見せてくれるようになります。
ただ墨で描いていただけの絵を
「水墨画」にしてくれる大切な技法です。
この記事では、
面で描くのと線で描くのの違い、
それらを使った技法、
色々とある技名について話していきます。
目次
面で描くということ。線で描くということ。

水墨画は、輪郭を描いていくか、
面全体で描いていくか。
その両方を使います。
穂先で描くか、
寝かせて筆全体で描くか。
筆の先で書けば細くなり、
少し寝かせれば少し太くなり、
全体を寝かせて描けば、
線ではなく、面になります。
まあ、全部寝かせて描いても
絵の大きさや表現方法により
輪郭は取れますけどね。
とりあえずここでは、水墨画は
その両方を使って描くものだと
覚えてもらえたら充分です。
水墨画を彩る5つのテクニック
①冴え(潤筆)

筆に充分に墨を含ませて、
冴えのある鮮やかな面や線を描きます。
②かすれ(渇筆)

筆に含む墨の量を減らし、かすれを出します。
墨の量や描き方によって様々な変化を楽しめます。
③にじみ

和紙に水を張り、その上に墨をにじませます。
すぐに筆を動かさずに、
墨がにじむ様子を見ながら描いていきます。

きれいな水を張るだけでなく、
薄墨で描いたものが乾く前に、
その上に濃墨を滲ませて描く方法もあります。
破墨法と呼ばれる技法ですね。
ただ、そもそも水墨画は
墨がにじむ紙に描くものですから、
水を張る張らない以前に、
筆に含んだ墨の量や筆圧などを
考えながら描いていくことになります。
ちなみにこの絵には冴えもかすれもあります。
④ぼかし

和紙に水を張り、にじみとは逆に、
軽く筆を払いながら墨を広げていき、
遠くにぼやけて見えるような絵を描きます。
遠景に使いがちな技法ですが、
必ずしもそれだけに使う技法
というわけではありません。
⑤たらしこみ

薄墨で描いたところへ、
その薄墨が乾く前に濃墨を「たらしこみ」ます。
にじみと似ていますが、こちらの場合は、
墨を「たらして」這う濃墨の効果を利用する
といった感じです。
「たらすようにして」というか。
水を吸いにくい紙
(鳥の子紙、にじみ止めされたものなど)
を使う場合が多いです。
道具(筆)ももちろん使いますが、
紙のしわに沿って勝手に流れたり、
自分で紙を動かしてみたり、
そうやってできる模様を
そのまま活かしたりもします。
技名について

歴史が長いせいか、水墨画は
同じ技名でもそれぞれ解釈が違っていて
どれが正解かわからなかったりします。
なのでしっかり技の名前に紐付けて
覚えるというより、
この描き方では墨がどんな動きをして、
絵にどんな効果をもたらすのか。
それを学び、作画に応用していくことのほうを
優先してください。
まとめ

今回話したのは、
- 筆の面で描くのと線で描くのの違いについて
- 5つの技法
- 技名について
です。
これらの技はすべて、
描き手の思い通りにはなりません。
水墨画は、
その墨や筆に対して、
こういう絵を描きたいからこう動け
こう動かしてやる
とコントロールするものではありません。
目的は墨を支配することでは決してありません。
自然の流れを活かし、
自由な柔らかい心で、
自分なりの解釈を見つけていきましょう。