薄氷の下で春を待つ魚達〜七十二候・魚上氷(うおこおりをいずる)

こんにちは。
水墨画アーティストの八束徹です。

冬の間、川や沢に張る薄い氷。
その下で魚達は春の訪れを待ち続けています。
やがて春の始まりとともに吹いた
東風(こち・はるかぜ)が、
その薄氷を溶かし始めるのです。

2月12日から2月17日頃の七十二候は、
立春末候の、魚上氷(うおこおりをいずる)です。
二十四節気では立春
その立春を3つに分けたうちの3番目(末候)です。

この記事では、
その魚上氷、 今回描いた水墨画
について話していきます。

薄氷の下で春を待つ魚達〜魚上氷(うおこおりをいずる)

東風が吹いて薄氷を溶かす

魚上氷(うおこおりをいずる)とは、
割れた氷の間から魚が飛び出る、
という意味です。

この時期に沢や湖に張る薄氷。
とは、川の小さい版で、
なんていうか、川は川なのですが、
地図には乗っていなかったりするような、
そんなこじんまりとした
水が流れている場所
のことです。

その表面に張った、
少し押したらすぐに割れてしまうような
薄い薄い、氷。

私が生まれ育った雪が残る町の
静かな川辺を流れる水。
子供心に割った氷の下の水の冷たさに
「ひゃっ」と思わず声をあげたものでした。
それでもそれだけで、
気分は高揚していたものです。

今ではわざわざ2月の沢へなど、
降りていかなくなりました。
大人になるということは、
一つずつ楽しさを忘れていくもの
なのかもしれませんね。

薄氷はうすらいとも読み
春の季語とされています。

立春とともに東から吹いてくる、小さな風。
東風(こち)が薄氷を溶かし、
柔らかな日差しを
水の中へ届け始めるのです。

水面に顔を出す魚達

吹き始めた東風がとかした薄氷の隙間を
ぴょんと魚が飛び出てくる。

言葉の通り受け取ると
魚上氷はそういう解釈になるのですが、
実際に魚が水面に顔を出す理由は、
餌を取るためだったり、
寄生虫を振り払うためだったり、
外敵から逃げるためだったりと
さまざまです。

イメージとしては、
水の表面の温度が上がり
水の底でじっとしていた魚が
川の表面まで登ってきて、
その勢いで顔を出し、
水面に波紋を残していく。

そんな感じではないでしょうか。

真っ暗な川底に潜んでいた魚たちが
喜ぶ姿が目に浮かぶようですね。

長い冬が終わる
自由に泳げるぞ、と。



川を覗くと、魚達の黒い影が
ゆらゆら揺れています。

そろそろ春がきたかと、
日差しが差し込み始めたその
水面の下で。

水墨画で七十二候を描く〜魚上氷(うおこおりをいずる)

陸地から薄氷が水面に広がり、
その下を魚が泳ぐ様子を描きました。
左側に残した余白は、
その先へ続く川を想像させてくれます。

水墨画における余白の
効果的な使い方のひとつです。

子供の頃には、寒い朝の登校時など、
わざと道を外れて、
小さな沢へと降りたりしたものです。
なんでも物珍しく、
楽しいと思えていた時期でしたから、
ちょっと踏み込めば割れる薄氷に
興奮したものです。
靴がびしょ濡れにならないように気をつけながら、
陸から足を伸ばして、
氷を割り続けて遊んでいました。

その薄氷の下で春を待つ魚たちは、
罪を知らぬ子供の無邪気な悪戯を、
どんな気持ちで見上げていたのでしょうか。

もしかしたら本気で飛び上がって、
こっちを脅かしてやろう
なんて思っていたかもしれませんね。

まとめ

今回話したのは、

  • 七十二候・魚上氷
  • 水墨画で描いた魚上氷(うおこおりをいずる)

についてでした。

次の七十二候は、
雨水初候 土脉潤起(つちのしょううるおいおこる)です。

二十四節気が、雨水(うすい)に変わります。