正解は?紅葉と書いても「もみじ」。楓と書いても「もみじ」|水墨画で描く楓蔦黄(もみじつたきばむ)

こんにちは。
水墨画家の八束徹です。

楓蔦黄(もみじつたきばむ)とは、
楓(かえで)や蔦(つた)が紅葉する
という意味です。

北海道を皮切りに南下を始める紅葉前線
別世界へ誘ってくれる観光地での景観も
素晴らしいものですが、
紅葉はなにも特別な場所だけに
限られたものはありません。

通勤時の歩き飽きたいつもの道にも、
それは見つかったりするものです。

この記事では、その楓蔦黄、
そして今回描いた水墨画、

について話していきます。

11月2日から11月6日頃の七十二候は、
霜降末候 楓蔦黄(もみじつたきばむ)です。

二十四節気では、霜降(そうこう)。
その霜降を3つに分けたうちの 3番目(末候)です。

紅葉と書いても「もみじ」。楓と書いても「もみじ」その理由とは?|楓蔦黄(もみじつたきばむ)

「もみじ」の正しい使い方

「もみじ」葉が紅葉すること全体を
現す言葉
です

楓(かえで)を「もみじ」と読ませているのは
楓が、紅葉する落葉樹の代表的なもの
とされているからです。

今回の七十二候・楓蔦黄は、
そこに蔦が加わり、この2種類の草木が、
赤や黄色に色づくという内容になります。

カエデ科の樹木をモミジと呼ぶのも、
紅葉=もみじ」の法則からです。

そのモミジイチョウをはじめ、
紅葉する草木は覚え切れないほど
たくさんありますね。

9月あたりから、北海道を皮切りに
南下する紅葉前線。
その美しさは誰もが知るところ。

この時期になると、紅葉スポットに
出かけていく人も
多いのではないでしょうか。

紅葉の時期はあっという間で
毎年毎年、紅葉が綺麗ですよと、
その情報だけが耳に入り、
そのうち観に行こうと思っていたら
いつのまにか枯れています。

それだけ私達は、日々の暮らしに
追われている
ということでしょうか。

しかし、それならばなおのこと
わざわざ遠出する特別感
休日にあてがわなくても、
頑張って足を伸ばして
山や大きな公園などに行かずとも、

ふっといつも帰り道で見かけた
道端の紅葉の美しさに気がつく。

そういう心を養っていけたらいいですね。

それはそこにちゃんとあるし、
私たちの目に写っているし、
何も遅くなってはいないのですから。

紅葉する理由。なぜ葉は赤く染まる?

さてそんな紅葉ですが、
なぜ緑葉はこの時期になると、
赤や黄色に色づくのでしょうか。

赤くなる理由〜アントシアニン

これは光合成の話からになるのですが、
葉緑体を持つ葉は、空気中の二酸化炭素を、
水分と光エネルギーを使って
糖やでんぶんに変え、
不要になった酸素を吐き出します。

これが私達がこの地球上で
生きられる理由
なのですが、

その際に活躍するのが、緑の色素を持ち、
光エネルギーを吸収するクロロフィル

光合成は、温度の影響を受けやすく
寒くなると効率が悪くなります。
樹木は光合成がうまくできない状態の葉を
維持するのが大変になるので、
最終的に葉を落とし
ます。
これを行う樹木が、俗にいう落葉樹です。

その準備として、樹木はクロロフィルを
分解
して取り込み、養分を回収し、
それが終わると葉の付け根に離層を作り、
葉と枝をつなぐ管を遮断します。

その離層を作る際に、葉の中に
アントシアニンという赤色色素が生まれ、
それが葉を赤く染めるというわけです。

黄色くなる理由〜カロテノイド

例えばイチョウなどの葉には、
緑色の色素を持つクロロフィルと、
黄色の色素を持つカロテノイドが、
8:1ほどの割合で共存しています。
当然、割合の多い色素が目立つため、
葉が緑色に見えているのですが、

秋になり、前述の理由により
クロロフィルが分解されて
樹木に回収されると、
必然的にカロテノイドの割合が多くなり、
葉が黄色になる
というわけです。

木は生きているとはいいますが、
まさにその通りですね。
厳しい冬を越さなければならないのは、
草木も同じなのです。

水墨画で七十二候を描く|楓蔦黄(もみじつたきばむ)

この記事を書いていて
私自身気が付いたのですが、

紅葉を描くならば、
やはりそれなりのスポットに行きたい

そういう気持ちに縛られていました。

けれどそれは日々の暮らしに
寄り添うものでしょうか。

たとえば、普段の何気ない瞬間に、
ふと目についた季節の美しさ、
そうやって心にすっと入ってくる感動が、
美しい絵になると私は思うのです。

赤く染まるカエデの葉は今も
晩秋の雨に打たれながら
私達の想いの中で、揺れています。

それぞれの形と色彩で、
ただただ、美しく。

▶︎静かな手紙をお送りしています
ざわつく日々に、墨の余白と灯火を。