こんにちは。
水墨画アーティストの八束徹です。
霎時施(こさめときどきふる)とは、
小雨がしとしと降るという意味です。
この「霎(こさめ)」は、小雨ではなく、
晩秋から冬の雨を代表する時雨のことです。
そんな時雨は誰もが知る雨の呼び名ですが、
実は日本中どこにでも降るものでは
ないのです。
この記事では、その霎時施、
そして今回描いた水墨画、
について話していきます。
10月28日から11月1日頃の七十二候は、
霜降次候 霎時施(こさめときどきふる)です。
二十四節気では、霜降(そうこう)。
その霜降を3つに分けたうちの 2番目(次候)です。
目次
地域限定??時雨とはどういう雨のことを意味するのか?|霎時施(こさめときどきふる)
時雨が降る地域とは?
![](https://yatsukatoru.com/wp-content/uploads/2021/10/3-7.jpg)
この小雨とは、
時雨(しぐれ)のことになります。
その昔、時雨月と呼ばれた陰暦10月は、
今の新暦にすると、ひと月飛んで11月頃。
時雨は、ちょうどこの晩秋の
冷え込みの中で見られる現象です。
秋の終わりから冬にかけて、
突如降り始める雨。
私達はそれを風流に
時雨と読んだりしますが、
実は時雨と名付けられた冬の雨は、
どの地域にでも降るわけではありません。
時雨とは主に盆地で見受けられるもの。
京都や福島、長野などの山間部で
北西の季節風(木枯らし)が
山にぶつかり、上昇し、
そこで生まれた雲が
降らせる雨のことなのです。
そんな地域限定の時雨ですが、
和歌や俳句に詠まれたことで
盆地のない関東平野などの他の地域にも
広く知られるようになりました。
やがて人々は、秋冬の通り雨のことも
その情緒に寄り添って時雨と呼ぶようになり、
その風情を楽しむようになったのです。
言葉の響きがそうさせるのか、
寒冷期の雨の侘しさ・寂しさを表すのに
適しているような気がするのは、
今、この時代に生きていても、
わかるような気がしませんか?
それは次に話す、時雨にまつわる
いくつかの言葉が証明してくれます。
時雨にまつわる言葉たち
![](https://yatsukatoru.com/wp-content/uploads/2021/10/2-6.jpg)
地域限定の雨、時雨。
暦はまだ秋ですが、ほとんどが
冬の季語になっています。
そんな時雨にまつわる言葉を、
いくつか拾い上げてみました。
(*カッコ内は、季語)
冬の季語になっているもの
▶︎初時雨(冬)
その年になって初めての時雨のこと。
▶︎片時雨(冬)
片方の空では時雨が降り、もう片方では
青い空が広がっている様子。
▶︎村時雨(冬)
狭い範囲にひとしきり激しく降り、
通り過ぎて行く時雨のこと。
▶︎朝時雨、夕時雨、小夜(さよ)時雨(すべて冬)
朝に降る時雨、夕方に降る時雨、
夜に降る時雨のことです。
冬以外の季語のもの
▶︎秋時雨(秋)、春時雨(春)
秋や春に降る時雨に似た雨のこと。
▶︎蝉時雨(夏)、虫時雨(秋)
実際の雨ではなく、それらの鳴き声を、
降り注ぐ雨音になぞらえたもの。
****************
雨に関する言葉はたくさんありますが、
時雨だけでもこれだけあります。
最初に話した時雨月も、
時雨から生まれた言葉です。
こういった言葉達はみな、
自然の音がもっとはっきりと
聞こえていた時代だからこそ
生まれたものだと思います。
なので、現代の私達の暮らしには
馴染みが薄いかもしれませんね。
時雨は通り雨のように過ぎていきます。
しかし、この風流な言葉達は、
通り過ぎずにそこに残っていて
ほしいものです。
自然を肌で感じる当たり前の感性まで、
雨は洗い流しませんからね。
水墨画で七十二候を描く〜霎時施(こさめときどきふる)
![](https://yatsukatoru.com/wp-content/uploads/2021/12/img_1061-1.jpg)
この時期の雨は、冷たい風とともに
より一層の寒さを連れてきます。
冬本番はまだこれからですが、
晩秋のこの雨模様の寂しさに、
早々に気持ちが萎えてしまいそうになります。
すでに疲れている朝の憂鬱に
追い討ちをかけるような雨に、
つり革につかまりながら目を閉じる。
私が今日感じた「時雨」は、
その電車に乗る前に、
傘を差しながら見た民家の薔薇でした。
重い足取りの中で、私の目に
ふと飛び込んできた美しい世界は、
今までどこかに隠れていたわけでもない、
私が見失っていただけの世界でした。
車窓の向こうでは、風が
雲を流していくのが見えました。
遠くで青空が顔を出していました。
あがりかけた雨模様が、
私の疲れを少しだけ
取り除いてくれたのでした。
まとめ
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今回話したのは、
- 霎時施
- 水墨画で描いた「霎時施」
についてでした。
次の七十二候は、
霜降末候 楓蔦黄(もみじつたきばむ)です。