こんにちは。
水墨画アーティストの八束徹です。
鱖魚群(さけのうおむらがる)とは、
鮭が群がり川を上るという意味です。
鮭(さけ)はこの時期になると、
群れになって川を上ります。
この群れはいったい
どこからやってくるのでしょうか。
何のためにどこへ
向かっているのでしょうか。
その先は彼らの故郷なのです。
この記事では、その鱖魚群、
そして今回描いた水墨画、
について話してきます。
12月17日から12月21日頃の七十二候は、
大雪末候 鱖魚群(さけのうおむらがる)です。
二十四節気では、大雪(たいせつ)。
その大雪を3つに分けたうちの3番目(末候)です。
目次
鮭の川上り。何処から来て何処へ向かうのか。命懸けの理由|鱖魚群(さけのうおむらがる)
故郷よ〜死へ向かう決死の帰郷
鮭の川上りとは、
数年に及ぶ長旅の果ての帰郷です。
最後の最後に、生まれた川へ戻ろうと
川を上るのです。
まず、魚が生まれた場所へ帰ることを、
遡上(そじょう)といいます。
戻ってくるのは、主に産卵のためです。
長旅で大きく成長した鮭も、
親になって祖先を残すために
故郷へ帰ってくるのです。
鮭は川で生まれる魚で、
淡水魚に分類されているのですが、
ある程度成長すると海に出ます。
そして季節ごとの海の温度に合わせ、
住みやすい場所をいったり来たりして
移動しながら餌をとり成長を重ねます。
そして3〜5年くらいで大人になり、
そろそろ親になる時期を迎えた鮭は、
遠く離れた海から生まれた川を目指して
群れになって最短ルートで帰ってくるのです。
ただどの世界も生き抜くには厳しいもので、
自然の中、外敵と戦いながら生き延びて
その人生をまっとうできる鮭は、
全体の0.2%ほどしかいないそうです。
それでも死を覚悟した旅は
犠牲を伴いながら続きます。
ようやく故郷に辿り着く頃には
鮭の体はもうボロボロです。
そして生き残ったオスとメスで受精して、
卵を産み、数日で命を落とすのです。
我が子に会うこともなく。
寂しい話ですが、しかしその亡骸は、
森に住む動物達の餌になります。
そうすることで、鮭が海から取り戻してくる
栄養分が微生物になり、森に返されます。
そうして森はまた生きていける。
森が残れば自分達の産卵場所も守れる。
そんな自然の成り立ちのために、
鮭はその命を捧げているのです。
美味しい鮭料理を頬張る時、
そんなことを思い描けば、
ありがたさもまた、
増すかもしれませんね。
実は鮭と鱖魚(中国産)は別の魚
鱖魚は、けつぎょと読み、
中国に生息する魚です。
3〜40センチくらいある魚で、
体には不規則な暗い色の斑点が散らばります。
尾鰭も黒いまだら模様になっていて、
なんていうか、こう、
それこそ墨絵に描きたくなるような
中国っぽい魚です。
小骨のない白身魚で、美味しいらしく、
中国では高級食材として
扱われているそうです。
ケツギョは、養殖のために
台湾に輸出しているのを除けば、
生息する地域は中国のみ。
日本では外来生物法により、
生きたままその姿を見ることはありません。
外来生物法とは日本に元々いる生き物や
自然に影響を与えてしまう海外の生物を
規制するものです。
アメリカザリガニや、ミドリガメなども
その対象になっています。
コウライケツギョという似た種類の魚もいて、
こちらはもっと広く分布しています。
七十二候は中国から渡ってきたもの。
日本には鱖魚がいないため、
その際、似た生態の魚の鮭を、
代わりに当てはめたと言われています。
なので鱖魚群は日本の場合、
鮭の話になります。
水墨画で七十二候を描く〜鱖魚群(さけのうおむらがる)
今回描いたのは鮭の滝登りです。
鮭は産卵のために、
自分が産まれた場所に戻ります。
成長するための長旅を経て、
広い海から岸に戻り、川を上ります。
それは子孫を残していくためであり、
さらには海から栄養分を取り戻し、
森に返すためであり、
鮭はその役割を果たすために、
必死で川を逆走し、滝を上るのです。
思想することができる動物である私達人間は、
その役割を見失うこともできます。
正しさも間違いも、それぞれ違います。
故郷に戻る人、戻らない人も
それぞれにそれぞれの理由があるのでしょう。
鮭はその役割を果たすために生きる
それと比べて私の役割はなんだろう。
人間は自分でそれぞれの役割を
探すことができますね。
孤独な人の胸に私は、
ちゃんと絵を届けることができるだろうか。
生きて生きて生きて、
もっともっと描いていかなければ。と、
今回は特にそう思いながらの作画でした。
まとめ
今回話したのは、
- 七十二候・鱖魚群
- 水墨画で描いた鱖魚群(さけのうおむらがる)
についてでした。
次の七十二候は、
冬至初候 乃東生(なつかれくさしょうず)です。
二十四節気は、冬至(とうじ)に変わります。