残酷な絹の衣。蚕(かいこ)の一生とは?〜七十二候・蚕起食桑(かいこおきてくわをはむ)

蚕の一生は、人の手の中で始まり、
人の手の中で終わります。
美しい絹を生み出すために養われる物語。

その一生は何を残していくのでしょうか。

こんにちは。
水墨画アーティストの八束徹です。

5月21日から5月25日頃の七十二候は、
小満初候 蚕起食桑(かいこおきてくわをはむ)です。
二十四節気は、小満(しょうまん)に変わります。
その小満を3つに分けたうちの1番目(初候)です。

この記事では、その蚕起食桑、
今回描いた水墨画、

について話していきます。

残酷な絹の衣。蚕の一生とは?〜蚕起食桑(かいこおきてくわをはむ)

5000年の歴史を持つ養蚕(ようさん)

蚕起食桑(かいこおきてくわをはむ)とは、
蚕が桑の葉を盛んに食べ始めるという意味です。

蚕の幼虫は桑の葉をひたすら食べた後、
頭を上げて眠り、
目が覚めると脱皮します。

それを成長過程で繰り返すので、
この七十二候になったのだと思います。

そしてそんな蚕の幼虫が、
蛹になる際に出す白い糸。
それが絹(シルク)糸になります。

蚕が生み出す絹は、金と同じ価値がある
と言われたほどでした。
シルクロード(絹の道)と名付けられた
歴史的な貿易の道があるくらいですから、
その存在価値の高さがうかがい知れます。

絹糸の生産を行う養蚕(ようさん)は、
5000年の歴史を持つ産業です。
日本へも、中国から農作とともに伝わり、
人々の生活を支え、
暮らしに根付いてきました。
絹はその美しさから裕福な人達に好まれて
高額な値段で売れたため、
養蚕農家を含め村民たちは、
蚕をおかいこさまと呼び、
あがめていたくらいです。
養蚕農家は今でも
日本のあちこちにあります。

羽ばたくことのない白く美しい羽根

蚕はクワコという同じカイコガ属の昆虫が
家畜化されたものと言われています。
それ以降はずっと人の管理下で
子孫を残して
きました。

繁殖用のカイコガは卵を産むと
生まれてきて5〜10日程度で、
その羽で羽ばたくこともなく死んでいきます。
初めから最後まで、家畜として。

この世界のすべての蚕は
まさにそのためだけに存在していて、
自由に生きることはないのです。

蚕は長い家畜生活の中で
野生に戻る能力を失ってしまっていて、
もはや人の管理下でしか生きていけません。
外の世界に出されても、
他の天敵と戦う術も逃げる術もなく、
野生の桑も食べようとはしないし、
成長してカイコガになったあとも
その羽で飛ぶ力を失っているのです。
羽ばたくこともなくと言ったのは
そういう理由からです。

水墨画で七十二候を描く〜蚕起食桑(かいこおきてくわをはむ

今回は睡眠中の蚕の幼虫を描きました。

薄墨で幼虫の体を描いてから、
濃墨で顔や模様を付け足しています。
表現にもよりますが、
薄墨が乾き切る前に濃墨を入れると、
一体感が出ます。

葉脈なんかもそうですね。

蚕が一心不乱に食べ続ける桑の葉にも
当然葉脈はありますね。

幼虫の成長には1齢期から5齢期まであり、
その間はひたすらその食事・睡眠、
脱皮を繰り返します。
そして5齢期を迎えたところで
口から白い糸を出し、
自分の周りに繭を作り始め、
その繭が、加工され絹(シルク)となり、
洋服や着物、ハンカチだとかに
使われていくのです。

絹は繊維の女王といわれているそうです。

蚕も成長したカイコガもその白さのせいか、
どこか可愛く見えるのは私だけでしょうか。
深く知れば知るほど
それがさらに哀れさを生み出し、
残酷にも思えてしまいます。

そう思う私も人間ならば、
その絹(女王)で編んだ衣を
綺麗だ綺麗だと「まとう」のも
人間なんですよね。

まとめ

今回話したのは、

  • 七十二候・蚕起食桑
  • 水墨画で描いた蚕起食桑(かいこおきてくわをはむ)

についてでした。

次の七十二候は、
小満次候 紅花栄(べにばなさかう)です。