こんにちは。
水墨画アーティストの八束徹です。
蒙霧升降(ふかききりまとう)とは、
深い霧が立ち込めるという意味です。
相変わらず暑さの続く日々。
標高の高い土地では、
深い霧が立ち始めます。
それが避暑地を涼しくするのですが、
霧が生まれるのは、その
高地の気温の低さによるもの
なのです。
この記事では、その蒙霧升降、
そして今回描いた水墨画、
について話していきます。
*8月18日から8月22日頃の七十二候は、
立秋末候 蒙霧升降(ふかききりまとう)です。
二十四節気では、立秋(りっしゅう)。
その立秋を3つに分けたうちの3番目(末候)です。
目次
七十二候・蒙霧升降(ふかききりまとう)
![](https://yatsukatoru.com/wp-content/uploads/2021/08/2-4.jpg)
高原を白く包む霧〜その理由とは?
残暑見舞いをしたためる、
まだまだ暑さの続くこの時期に
深き霧などどこにあるのでしょうか。
今はまだ暑い熱気と湿気が
辺りを埋め尽くし、
朝晩に吹くほんの少しの風と
夕立が、わずかな涼しさを
運んでくれるだけの日々です。
蒙霧升降の蒙霧は「もうむ」と読み、
立ち込める霧のことをいうのですが、
この時期に「深き霧」をまとうのは、
標高の高い場所、
例えば高原の避暑地や山里や湖など。
標高の高い場所ほど気温は低いのです。
高い山の残雪を考えたら
納得がいきますね。
下界から見上げるそれは、
まるで別世界のようです。
残暑を避けて標高の高い場所を訪ねれば
霧に包まれて白くぼやけた自然の景色が
あなたを迎えてくれることでしょう。
下界ではその情景を思いながら、
秋が深まるまで待つしかありません。
霧と霞の違い
![](https://yatsukatoru.com/wp-content/uploads/2021/08/1-4.jpg)
太陽に近くなる分、
暑くなるのではと考えられがちですが、
標高が高い場所は空気が薄くなり、
そのぶん気圧も下がり、
その性質上、気温も下がるというわけです。
霧は地表の空気が冷やされて、
水蒸気が凝結してできた
細かい水滴の集まりです。
要するに高原は気温が低い場所だから、
霧ができるわけです。
避暑地と呼ばれる場所がどこにあるか、
調べてみたら納得だと思います。
これから秋が深まるほどに
標高の低い場所の空気も
冷えるようになり、
深い霧が朝夕に立ち始めますが、
それはもう少し先の話。
ちなみに同じ現象でも、
春は霞(かすみ)、
秋は霧(きり)
と呼ばれます。
霞は春の季語、
霧は秋の季語です。
水墨画で七十二候を描く〜蒙霧升降(ふかききりまとう)
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静かに佇む沼と、その奥に望む山々が
深い霧で霞んでいます。
まず手前の地面を濃墨で描いてから、
手前の沼と奥の山並みを薄墨で描き、
それが乾く前に、中墨、濃墨の順で
木々を描いています。
薄墨が乾く前なので墨が滲むのと、
さらに濃墨も薄墨に沈んで
少し色が薄くなります。
これで霧にぼやけた様子と
遠近感の両方を
同時に演出することができます。
これが水墨画の技法の面白いところです。
さて、二十四節気はすでに立秋後半。
残暑にうなだれながら
下界に暮らす身としては、
見上げた遠い山の向こうの
一足早いその白い霧模様に
憧れてしまいますね。
過ごしやすい秋の霧は
まだ下界では幻ですから。
霧を用いて勇み足で詠まれた、
秋の歌でごまかすばかりです。
まとめ
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今回話したのは、
- 七十二候・蒙霧升降(ふかききりまとう)
- 水墨画で描いた蒙霧升降(ふかききりまとう)
についてでした。
次の七十二候は、
処暑初候 綿柎開(わたのはなしべひらく)です。
二十四節気は、処暑(しょしょ)に変わります。