初めまして。
水墨画家の八束徹です。
神奈川県三浦市の毘沙門湾にある
盗人狩へソロツーリングに行ってきました。
「盗人狩(ぬすっとがり)」
というそのインパクトある名前にふさわしい、
荒々しい海と波の景観が
私を迎えてくれました。
天候は晴れ。
風は潮風。
目次
盗人狩について

観光のメインであろうその岩礁地帯は、
同じ県道215号線沿いにある
毘沙門湾の漁港を通り抜けた先に
広がっているのですが、
ナビでは、その岩礁地帯ではなく
なぜか立ちはだかる崖の上に到着しました。
盗人狩という名の由来と逸話
かながわ景勝50選の一つに数えられる
景勝地としての盗人狩は、
打ちつける波に削られた奇岩が悠然と広がる
荒々しい岩礁地帯を指しています。
そこが盗人狩と呼ばれるようになったのは、
「昔、盗賊が追われて、
この山の端まで来て下を見ると、
恐ろしい断崖と怒涛の逆巻きに、
ぞくぞくと身震いして足が竦み、
動けなくなり容易く捕まった」
や、
「昔、追いつめられた盗賊が
木の地で渦巻く波濤(はとう)を前に
足がすくみついに捕えられてしまった」
といったような逸話からです。
波濤とは、大きな波のことです。
それならば下の岩礁地帯ではなくて
上の崖のことになるのではないかと
思うのですが、
盗人狩と呼ばれているのは、
下の岩礁地帯のようです。
この盗人狩(岩礁地帯)は釣りの名所らしく、
私が行った時も釣り人が2人ほどいました。
帰りも違う釣り人とすれ違いました。
盗人狩周辺の観光スポットと、ゆるやかに続く毘沙門湾バイパス

毘沙門湾にある他の観光スポットは、
- 毘沙門洞窟弥生時代住居跡群
- 金毘羅大権現
- 毘沙門天浜
- 宮川港
などがあります。
なお、毘沙門湾沿いには、
県道215号線(毘沙門湾バイパス)が
ゆるやかに続いています。
ライダー的にはこれが一番の魅力です。
海と自然の景色の中を走るライディングは
最高以外の何ものでもありません。
盗人狩への訪問
盗っ人の足がすくんだ断崖絶壁

まず初めに訪問したのは、
ナビに従って登ってきてしまった
崖の上でした。
ナビを見ながら、
え?ここ行くの?
みたいな道って、
それが正解の場合もあるので迷います。
こういう道に鉢合わせた場合、
車ならば一旦降りて確認しに行きますが、
バイクなのでそのまま登っちゃいました。
荒野を想像していたのですが、
そこにはキャベツ畑が広がっていました。
舗装は切れて、農道を進むと
農作業中の地元の方と遭遇し、
逃げるように二股を右へ折れました。
それこそまるで盗っ人のように。
道はすぐに坂になり、
慌ててバイクを停めました。

海っぺりでほったらかされたキャベツ畑が、
海風に煽られてその葉を撒き散らしていました。
それはそれで一つの観光物のようでした。

何を祀っているのか、
崖っぷちに小さな社がありました。
その先は足を踏み外したら一貫の終わりです。
木が生い茂ってはいますが、
観光客用に柵などはありません。
そもそもこの崖の上は観光地ではないので。
落ちたら一巻の終わりですね。
”追い詰められた盗っ人の足がすくんだ”
という逸話がよくわかる、
まさに断崖絶壁の崖です。
崖下では、波が荒々しく
しぶきをあげています。

崖の下の岩礁地帯を歩く
駐車場を探す〜高台の宮川公園へ

崖から見下ろした岩礁地帯を歩きたい。
と思うのは当然で、
今回の一番の目的ももちろんそれです。
よくよく調べると、どうやら
下にある毘沙門湾沿いに歩くらしい。
(気づくの遅すぎですけど)
地図で道を確認してバイクを走らせます。
毘沙門バイパスを折れて、
ようやく漁港の入り口に到着。
するとこんな案内板が。

途中で壊れ(壊され?)てしまっていますが、
まさかの駐車禁止。
調べてみたら以前あった駐車場は、
2020年あたりに廃止されたようです。
正直その辺に勝手に停めておけそうな
自然だらけの「付近」でしたが、
それもまずいだろうと
一旦あきらめて駐車場を探します。
(二回目に来た時は停めましたけどね)
さて近くに駐車場付きの茶屋はあるけれど、
そのために駐めるわけじゃないしと、
とりあえず先ほどの崖へ逆戻りしたところ、
その入り口の少し先に、
左手に宮川公園、
右手に無料の駐車場を見つけました。
大きな風車があり、
夜はライトアップもするそうです。
公園にはトイレもあります。
結果的に盗人狩を訪問するには、
ナビもここで設定して、
向かいの駐車場に停めるのがベストかもしれません。
バイクを駐められたので、一安心。
バイパスを徒歩で下っていきます。

奇岩が並ぶ岩礁地帯と波濤〜盗人狩へ

10分くらい歩いて、
先程の漁港入り口へ到着。
車両進入禁止のバーを徒歩でくぐり、
毘沙門漁港を突っ切ると
案内の札が立っていました。

そして聞こえてくる波の音。
見渡す海と岩礁はまさに自然のままに、
広がっていました。
観光客や釣り人のために
「この道をどうぞ」
「この広場をどうぞ」
などと整備された道などなく、
足元の悪い岩の上を、時には
飛び越えたりしながら進んでいきます。
足元に気をつけながら、
波の水しぶきが上がる場所まで
歩いて行きました。
ちなみにあちこちにゴミが捨てられていて、
波にさらわれて土手に乗り上げたような
ゴミも目につきます。

これも普通なら汚いなあと思うところですが、
盗人狩という名前に合っているようで、
不思議と違和感がなかったです。
湾の入り江の反対側では
弥生時代の住居といわれている洞窟、
「毘沙門洞窟弥生時代住居跡群」が
観光地になっていますが、
こちら側にも小さな洞窟がありました。


探索から引き返してからは、
安全な場所に腰を下ろして、
しばらく打ち付ける波を眺めていました。
海はなぜこうも人を惹きつけるのか。
崖の上も下も、
一人旅で黄昏れるには
うってつけの場所でした。
あとがき
ここには、人工の明かりなどひとつもなく、
崖の上も下も、その名前からか、
飾り気のなさからなのか、
物悲しさが漂っていました。
海の美しさというよりも、寂しさ。残酷さ。
不穏さと悲しみも携えているような場所でした。
逃げ場を失った罪人が、全てを悟ったかのように。


