水墨画初心者の方へ〜最初に揃えたい水墨画の道具を紹介します(2022年10月更新)

こんにちは。
水墨画アーティストの八束徹です。

水墨画は、
筆と紙と墨があれば始められます

しかし、その完成形は
筆、墨から始まり、
最後の篆刻(てんこく)まで
たどり着いたものです。

せっかく描くならちゃんと
仕上げたいですよね?

道具に関する考え方はさまざまですが、
この記事では、私が使用しているもの、
そして私の使い方を軸にしつつ、
その完成形への道筋を綴っていきます。

は基本的に、
動物の毛を使用したものを使います。
それがどの動物の毛かによって、
筆の硬さが変わります。

大きさもそれぞれです。

水墨画でよく名前のあがる筆は、
付立筆、面相筆、隈取筆、連筆、刷毛筆、
など。

色々あるんですが、まず初めは、
付立筆の太いもの(太筆)と
細いもの(細筆)から始めるのがベストです。

突き詰めると、その道具以外にも
本当はなんでもありなのですが
(例えば、手で描いたり、
割れて元に戻らなくなったナイロン筆で
出せる味もあるということです。
芸術ですから)、
まずは水墨画の基本を学ぶために、
筆で技法を身につけましょう。

ちなみに私は今でも、ほとんど
付立筆と刷毛筆しか使いません。


どちらにしろ色々揃えるのは、
必要に応じてで
いいんじゃないかと思います。

固形の墨

私が使い込んだもの

墨は基本的には固形の墨
硯で擦って描きます。

固形墨には、
松煙墨(しょうえんぼく。
松の木片を燃やした煤と膠)と、
油煙墨(ゆえんぼく。
油の煤と膠)の2つがあり、
成分の違いにより
それぞれ特色を持ちます。

一般的には、松煙墨は青く、
油煙墨は茶色く見えると
言われています。

また、違う表現をすると、
松煙墨は優しい味わい、
油煙墨は力強い味わいになる
とも言えます。
こっちのほうがわかりやすいですね。

もちろんどちらも黒には
変わりありません。


ただ、黒も一色ではないと知ることが、
水墨画を楽しむための
貴重な一歩となります。

墨汁/墨液

墨汁は、墨をすらなくてもいい
というメリットがあり、
その側面から重宝されます。

しかし墨汁には固形墨の成分にプラスして、
防腐剤の薬品が入っています。

高価なものでないと
どれだけ水を足しても綺麗に薄まらないし、
その後、筆を洗うのも大変です。
いつまでも墨がとれません。
しかも洗うのが大変どころか、
先述した防腐剤は筆を痛めてしまいます。

こういった理由から
私は基本的には使いません。

しかし、ライブペインティングなどでの

・その都度墨を擦っていては
パフォーマンスにならない、
・大きな紙に描くので
たくさんの墨を使う


こういった場合には使用したりもします。

ただその場合はしっかりと
水で薄まるレベルの高価なものが
必要になってきます。

しかしそれでも、墨汁は墨汁です。

硯(すずり)

には、天然石、瓦、陶器、漆器、
意外なところで木製のものもあります。
基本は、天然石製のものを使います。

プラスチックやセラミックのものは、
発墨が悪いのでおすすめしません。

彫刻つきだったり、
工芸品のような箱つきだったりして、
アンティーク品としての付加価値が
値段を品質以上にあげてしまっている
場合もありますが、
そういうのはどちらかといえば、
観賞用として飾るためのものです。
(お金持ちが。)

まずはそれなりの質でも、
ちゃんと天然石製のものを用意しましょう。

和紙

水墨画は和紙に描きます。

和紙とはいいますが、
和紙は日本で作られたから「和」紙です。
それが書道用紙になったり、
書画用紙になったりしているだけです。
特別なものでもなんでもありません。
書道用紙も和紙ですから、
それに描いても問題ありません。

和紙の原料は、
麻、楮、三椏、雁皮、竹などで、
墨の滲み、発色など紙によって様々です。

現代では機械漉きと
手漉きの違いもあります。
手漉きのほうが品質が良く高価です。
私は練習用には
安価な機械漉きを選んでいます。

画仙紙

画仙紙は書画用とされている紙です。

中国の「宣紙」という
高級な書画用紙のことを
「画仙紙」と呼ぶ場合もあります。
ちなみにその最高級の画仙紙が、
紅星牌というものです。

二層紙

その名の通り、2枚重ねたもので、
厚みが違います。

私は、教室で使用する紙が
基本的に二層紙なので、
それに慣れたこともあり、
他で手に入れる際も
二層紙を探すようにしています。

紙の大きさ

和紙にも大きさが色々あり、
半紙、半切、聯落ち、全紙と
長方形に広がっていきます。
掛け軸などで見かけるあの形といえば、
わかりやすいと思います。

鳥の子紙

鳥の子紙は、墨が滲みづらい和紙です。

大雑把にいうとケント紙に描くような
感じです。
滲まないので、水を張った上に
墨を流すような技法で描いたりします。

色紙/短冊、葉書など

半紙より小さい作品を描く際に使います。

これも和紙が使われたものを使います。
100均などにあるつるつるのものではなく。

小皿

小皿は、濃墨に水を加えて、
薄墨を作るのに使います。

これは100均に売っているような
もので充分ですが、
底が平らなものを使いましょう。

筆を寝かせて、
筆全体が行き届く大きさのもの
が必要です。

なので以下のような梅皿は
それには向いていないですね。

梅皿

下敷き

下敷きは基本的に白を使います。
黒色は和紙から透けて見えてしまい、
墨のにじみがわかりづらくなるからです。

これも高価なものはいりません。

写真は半紙用ですが、
もっと大きな紙に描く場合は、
それにあわせて、揃えていきましょう。

汚れたら替えましょう。

筆拭き

筆拭きは、筆の水分や墨の含みを
調整する時に使います。
水分を多く含んだままの筆では
かすれは出せません

吸水性のよいタオルもいいですが、
私はティッシュペーパーを使っています。

墨池*筆洗い

墨池(ぼくち)は墨を
ためておくための道具ですが、
水墨画を描く際に
筆洗いとしても使います。

・初めに筆洗いに筆を入れて、
筆の中の空気を抜きながら水を吸わせる
・作画中に墨を付け直すために一度墨を洗う

こういう時に使います。

当然使っていれば、
水は墨で汚れていきます。
なのでその汚れ具合を見ながら、
水を取り替えていきましょう。

ちなみに私はいちいち水を変えていると
気持ちのスイッチが切り替わりそうなので、
必要な時以外は、
描き上がるまで替えません。

これも本来なら白いものの方がいいですね。
そのほうが水の汚れ具合が
わかりますから。

筆洗いも他に専用のものはあります。

落款印

落款印とは、仕上がった作品に、
朱色の捺印をする石の印鑑みたいなもの。
最後に自分の名前を入れるわけです。

ちなみにこの捺印のことを
篆刻(てんこく)と呼びます。

ただのサインのようですが、
実は水墨画ではその篆刻の位置決めが、
その作品を良くも悪くもしてしまう
という
とても大切な工程です。

はんこやさんで頼んで作ってもいいし、
教室によっては先生が
作ってくれたりします。
篆刻セットを使って、
自分でも作れます。

至急必要というわけではないですが、
上述した通り、水墨画は
落款を入れて完成ですので、
用意したほうがいいですね。

描く絵に合わせて、
異なる大きさのものが
いくつかあると便利です。

最後にどこに篆刻をするか

これで悩むのも、
水墨画の楽しみのひとつです。

朱肉

朱肉はスタンプ用のスポンジ製ではなくて
練り朱肉を使用します。

顔彩と油分が分離してしまうので、
時々ヘラや割り箸か何かで
その名の通り、練りましょう。

写真のものは安価なものですが、
展覧会に出したり、販売したり、
作品として仕上げる段階になったら、
高価なものを求めましょう。

霧吹き

霧吹きは主にぼかし技法で描く際に
水で和紙を湿らせたり、
鳥の子紙に水を張る時に使います。

私の場合、刷毛に水を含んで
代用することもあります。

その他、特に急がないもの要らないもの

胡粉/顔彩

水墨画の世界では
色付きの絵具を使い描くと、
墨彩画と呼ばれます。
胡粉(白)で雪を表現したりするだけなら、
墨彩画とは呼ばれません。

胡粉は別で買っておくといいです。
他の色は顔彩セットで充分です。

いずれにせよ、
しっかり色をつけてしまうと、
墨の濃淡による深みを失い、
趣きの違った絵になります。

文鎮

水墨画は余白も絵の一部です。

紙は筆を持たないほうの手で
押さえられますし、
余白を活かす水墨画では
文鎮があると目障りなので、
私はなるだけ使いません。

額/掛け軸など

作品を飾りたい時は、
裏打ちも兼ねて、画材屋さんや
表装店さんに相談しましょう。
ネットで受け付けているところもあります。

自分でできるものとしては、
写真のような簡易的なものもあります。
(これは半紙掛)

そしていずれにせよ、
色紙や短冊など以外の紙に書いた場合は
額装の際に以下の
裏打ち作業が必要になります。

裏打ち用紙/道具

和紙は水分を吸うとしなります
なので、裏打ちという、
紙を厚くする作業が必要になります。

専用の裏打ち用紙を
作品の裏側に貼るのですが、
これを、することによって
和紙のしなりが消えます。

自分でもできますが、素人作業では、
失敗したらやり直しが効きません
失敗したらせっかくの作品が
だめになります。

額装も含めて作画とは別の技術ですから、
ちゃんと学ぶでもない限りは、
無理にやらずに表装のプロに
頼みましょう。

机と椅子

水墨画は、和室で正座して
描いてるようなイメージですが、
座卓は腰を悪くするので、
椅子のある机が望ましいところです。

ちなみに大作(大きい紙)を描く時など、
紙額テーブルからはみ出す際は、
私は床に敷いて描きます。

あとがき

こうして水墨画に必要な道具を
書き並べてみたわけですが、
結構多いような気がしましたよね。

しかし、簡単に言ってしまえば

墨を硯で擦り、
筆を取り水を含ませ、
小皿で薄墨を作り、
和紙に絵を描き始めて、
途中、筆吹きや筆洗いで
墨や水分を調整したりしながら、
描き上げたら、
最後に落款印を押す。

この一連の流れの中に、
それぞれの道具が存在するだけです。

身についてしまえば、
「それだけのこと」
です。
水墨画の深さを知れば知るほど、
やがてその「それだけのこと」が、
楽しい」に変わっていきます。

この記事を読んでくれたあなたが、
もっと水墨画を好きになって
その「楽しい」を、見つけてくれたら
嬉しいなあと思っています。

この記事がその役に立つことを
願っています。