はじめまして。
水墨画アーティストの八束徹です。
墨は原料によって変わります。
おおまかには3つだけなので、
そんなに難しくはありません。
とはいえ同じ黒でも原料によって
発色や味わいが変わってきますから、
ちゃんと覚えて選んだほうが
いいですよね。
何も知らないで購入すると
損しますしね。
なので今から、
固形墨の種類、製造過程、金額、
新墨と古墨、そして選び方までを、
話していきます。
目次
固形墨の種類
![](https://yatsukatoru.com/wp-content/uploads/2020/06/e0091.jpg)
油煙墨(ゆえんぼく)
主に植物油(菜種油が最適とされる)を
燃やしてできる煤(すす)から作られます。
原料が菜種油なら茶系の黒、
椿油なら紫系の黒と、
使う油によって変わってきます。
イメージとしては、光沢が出る分、
強く存在感のある黒です。
松煙墨(しょうえんぼく)
松の木片を燃やしてできる煤から
作られます。
最初は茶系ですが、
古くなると青っぽい黒色を
出すようになります。
イメージとしては、光沢があまり出ないので、
優しくもの静かな黒です。
洋煙墨(ようえんぼく)
石油石炭などの煤に、カーボンブラックや
コールタールなどを加えて作られている墨です。
安く流通している墨はほとんどがこれです。
上記2つと比べて品質は落ちます。
油煙墨や松煙墨ができるまで
![](https://yatsukatoru.com/wp-content/uploads/2020/10/e0208.jpg)
材料を燃やして煤を作り、
湯煎した膠(にかわ)を混ぜ合わせます。
膠とは動物の皮や骨からとられるもので、
ゼラチンの工業製品用的なものです。
それに香料を加えて練り込んでいきます。
香料は、梅花(ばいか)、麝香(じゃこう)、
龍脳(りゅうのう)など。
香料を加えるのはなぜかというと、
独特な膠の匂いを消すためです。
「墨をすり、心を落ちつかせる」
というのはこの香料の効果によるものです。
ようするに、墨の匂いというのは
その香料の匂いなんですね。
そして、型を取り
二か月以上しっかりと乾燥させ、
乾いた音がするようになれば、
品名などを入れて完成です。
良い墨はこうして職人さんが
手間暇をかけて、作っています。
固形墨の値段について
![](https://yatsukatoru.com/wp-content/uploads/2020/10/e0211.jpg)
まず、固形墨はほとんどが
手作業によって作られているので、
職人さんのレベルによる
人件費の違いが生まれます。
熟年の職人さんと新人さんでは
人件費も違って当然ですよね。
それから、煤を作るための
油や松も種類がありますから、
貴重なものは高くなり、
そうでなければ安くなっていきます。
そういった理由から、
値段が変わってきます。
膠が枯れる〜新墨(しんぼく)と古墨(こぼく)
![](https://yatsukatoru.com/wp-content/uploads/2020/10/e0210.jpg)
できたばかりの墨と
完成後何年も経った後の墨では、
品質が変わります。
墨を作る時に必要な膠の量では
そもそもの膠の強さが目立つため、
できたばかりの新しい墨は
その分描いた時に粘りが出ます。
この膠は時間が経つと成分が弱くなり、
これを「膠が枯れる」というのですが、
そうなると原料とのバランスが取れて、
描いた時の墨の広がりが
良くなります。
淡墨作品
(薄い墨や水を使い、
にじみ、ぼかしを多用する作品)
を描く際には
ぜひ古墨を使いたいところです。
とはいえ当然、古墨になれば
値段も上がりますので、
どちらにしろ、本気の作品を
描き上げたい時になってから
用意すればいいことです。
それか、先に買ってから
2〜3年寝かせておくとか。
私は使いたくなっちゃいますけどね。笑
固形墨の選び方
![](https://yatsukatoru.com/wp-content/uploads/2020/10/e0212.jpg)
理想としては、
初めは、油煙墨、松煙墨を
それぞれ一つずつ、
手頃な値段の小さいものを購入して、
その違いを理解して、、、、
というやり方が良いと思います。
初めのうちは
発色の違いとか言われても
多分よくわからないですが、
そのうち、作品によって
使う墨を決めたり変えたり、
自分は油煙墨がいいと
それをメインに使うようになったり、
自分に合うやり方を
見つけていけるようになります。
ちなみに私が毎日使って
小さくなった墨は、
書道家だった祖父が
生前に購入した松煙墨です。
このように、あなたが墨の世界に
ひかれたとしたら、
どこかで道具との縁があるはずです。
墨も品質にばかりこだわるのではなく、
そういった出会いに寄り添っていくのも、
絵を描く心を育んでくれるものです。
まとめ
今回話したのは、
- 墨の種類
- 墨ができるまで
- 墨の値段について
- 新墨と古墨
- 墨の選び方
についてでした。
これで固形墨の特色について、
軽く理解していただけたかと思います。
このくらいのことを知っていれば
今後の墨選びに損はないはずです。
きっとあなたにも、
良い墨とのご縁がありますよ。