松煙墨?油煙墨?|水墨画初心者向け|固形墨についての予備知識・選び方

はじめまして。
水墨画アーティストの八束徹です。

墨は原料によって変わります。

おおまかには3つだけなので、
そんなに難しくはありません。

とはいえ同じ黒でも原料によって
発色や味わいが変わってきますから、
ちゃんと覚えて選んだほうが
いいですよね。

何も知らないで購入すると
損しますしね。

なので今から、
固形墨の種類、製造過程、金額、
新墨と古墨、そして選び方までを、
話していきます。

固形墨の種類

油煙墨(ゆえんぼく)

主に植物油(菜種油が最適とされる)を
燃やしてできる煤(すす)から作られます。
原料が菜種油なら茶系の黒、
椿油なら紫系の黒と、
使う油によって変わってきます。
イメージとしては、光沢が出る分、
強く存在感のある黒です。

松煙墨(しょうえんぼく)

松の木片を燃やしてできる煤から
作られます。
最初は茶系ですが、
古くなると青っぽい黒色を
出すようになります。
イメージとしては、光沢があまり出ないので、
優しくもの静かな黒です。

洋煙墨(ようえんぼく)

石油石炭などの煤に、カーボンブラックや
コールタールなどを加えて作られている墨です。
安く流通している墨はほとんどがこれです。
上記2つと比べて品質は落ちます。

油煙墨や松煙墨ができるまで

材料を燃やして煤を作り、
湯煎した膠(にかわ)を混ぜ合わせます。
膠とは動物の皮や骨からとられるもので、
ゼラチンの工業製品用的なものです。
 
それに香料を加えて練り込んでいきます。
香料は、梅花(ばいか)、麝香(じゃこう)、
龍脳(りゅうのう)など。

香料を加えるのはなぜかというと、
独特な膠の匂いを消すためです。

「墨をすり、心を落ちつかせる」

というのはこの香料の効果によるものです。
ようするに、墨の匂いというのは
その香料の匂いなんですね。

そして、型を取り
二か月以上しっかりと乾燥させ、
乾いた音がするようになれば、
品名などを入れて完成です。

良い墨はこうして職人さんが
手間暇をかけて、作っています。

固形墨の値段について

まず、固形墨はほとんどが
手作業によって作られているので、
職人さんのレベルによる
人件費の違いが生まれます。
熟年の職人さんと新人さんでは
人件費も違って当然ですよね。

それから、煤を作るための
油や松も種類がありますから、
貴重なものは高くなり、
そうでなければ安くなっていきます。

そういった理由から、
値段が変わってきます。

膠が枯れる〜新墨(しんぼく)と古墨(こぼく)

できたばかりの墨と
完成後何年も経った後の墨では、
品質が変わります。

墨を作る時に必要な膠の量では
そもそもの膠の強さが目立つため、
できたばかりの新しい墨は
その分描いた時に粘りが出ます。

この膠は時間が経つと成分が弱くなり、
これを「膠が枯れる」というのですが、
そうなると原料とのバランスが取れて、
描いた時の墨の広がりが
良くなります。

淡墨作品
(薄い墨や水を使い、
にじみ、ぼかしを多用する作品)
を描く際には
ぜひ古墨を使いたいところです。
とはいえ当然、古墨になれば
値段も上がりますので、
どちらにしろ、本気の作品を
描き上げたい時になってから
用意すればいいことです。

それか、先に買ってから
2〜3年寝かせておくとか。

私は使いたくなっちゃいますけどね。笑

固形墨の選び方

理想としては、

初めは、油煙墨、松煙墨を
それぞれ一つずつ、
手頃な値段の小さいものを購入して、
その違いを理解して、、、、

というやり方が良いと思います。

初めのうちは
発色の違いとか言われても
多分よくわからないですが、
そのうち、作品によって
使う墨を決めたり変えたり、
自分は油煙墨がいいと
それをメインに使うようになったり、
自分に合うやり方を
見つけていけるようになります。

ちなみに私が毎日使って
小さくなった墨は、
書道家だった祖父が
生前に購入した松煙墨です。

このように、あなたが墨の世界に
ひかれたとしたら、
どこかで道具との縁があるはずです。

墨も品質にばかりこだわるのではなく、
そういった出会いに寄り添っていくのも、
絵を描く心を育んでくれるものです。

まとめ

今回話したのは、

  • 墨の種類
  • 墨ができるまで
  • 墨の値段について
  • 新墨と古墨
  • 墨の選び方

についてでした。

これで固形墨の特色について、
軽く理解していただけたかと思います。
このくらいのことを知っていれば
今後の墨選びに損はないはずです。

きっとあなたにも、
良い墨とのご縁がありますよ。