こんにちは。
水墨画アーティストの八束徹です。
土脉潤起(つちのしょううるおいおこる)とは、
雨が降って土が湿り気を含む
という意味です。
この時期になると
優しい春の雨を受けて、
乾いた大地が潤い始めます。
その土の下では、
冬越しの虫たちや新芽が
本格的な春の訪れを
まだかまだかと待ち続けているのです。
この記事では、その土脉潤起、
そして今回描いた水墨画、
について話していきます。
*2月18日から2月22日頃の七十二候は、
雨水初候・土脉潤起(つちのしょううるおいおこる)です。
二十四節気では雨水(うすい)。
その雨水を3つに分けたうちの1番目(初候)です。
目次
七十二候・土脉潤起(つちのしょううるおいおこる)
北国の雪解けの名残がまだ残る田園。
雪は雨に変わり、土を潤し、
あたりに広がる湿った土の匂い。
その匂いに包まれながら、
とぼとぼと帰る学校からの帰り道。
もう傘はいらなくなった
雨上がりの夕方。
そんな子供の頃のことを思い出します。
田舎の子供ですから、
何も考えずに土を掘り起こして、
まだ準備のできていない小さな芽や、
眠り足りない虫たちを
起こしてしまったりもしたものです。
今では都会に暮らすようになり、
土の匂いを嗅ぐようなことも、
雨に変わった雪を
気にとめることもなくなってしまいました。
この土脉潤起が、この後の七十二候、
草木萌動(そうもくめばえいずる)や、
蟄虫啓戸(すごもりむしとをひらく)に
繋がっていきます。
急かされる暮らしに一息ついて、
この早春の雨の音に耳を済ましたら、
その雨音の向こう側で、
もしかしたら、
もう少しで太陽の下に出れるね
そんなふうに冬眠中の虫たちが、
わくわくしながら話している声が
聞こえてくるかもしれません。
水墨画で七十二候を描く〜土脉潤起(つちのしょううるおいおこる)
雨が雪を溶かし、土を濡らし、
雪化粧が泥にまみれながら剥がれていく。
水溜りにゆっくり落ちながら
溶けていく雪。
都会ではあまり見られない現象です。
雪国ではこんなふうに
雪解けの時期になると、
雨水や温かい風に溶け出した雪が、
あちこちで泥まみれになっています。
土なんかそのまま隠れていれば、
雪の絨毯も美しいままなのにと、
人は思うかもしれません。
汚いものは隠しておけと
綺麗な服を着ている人は言うかもしれません。
けれど雪国の人は、その泥まみれこそ、
美しさだと知っているのです。
私は時々考えます。
故郷を離れて長い今、
その小さな水溜りに自分の顔を写したなら、
今の本当の自分の姿が映るのではないか、と。
それで本当にいいのか?と。
まとめ
今回話したのは、
- 七十二候・土脉潤起
- 水墨画で描いた土脉潤起(つちのしょううるおいおこる)
についてでした。
次の七十二候は、
雨水次候 霞始靆(かすみはじめてたなびく)です。