「水墨画って筆ペンでもいいのかな?」
「筆ペンでも描けるのかな?」
私自身、最初はこんな感じでした。
墨ならなんでもいいんじゃないかと。
筆ペンはたいていはインクなので、
墨ではないこともわかっていませんでした。
なんの知識もなかった私はとりあえず
筆ペンと100円ショップの和紙だけを買って、
「自称水墨画」を描き始めました。
これが私の画家としてのスタートでした。
この記事では、
その後、本格的に水墨画を学び、
依頼をいただけるまでになった私が、
その過程で覚えた筆ペンについての知識、
筆ペンと筆の絵の違い、
筆だからこその水墨画の味わいについて
話していきます。
目次
水墨画は筆ペンでも描けるの?〜筆ペンについて
筆ペンの穂先
通常の筆は動物の毛で出来ていますが、
筆ペンは合成樹脂(ナイロン)でできています。
通常の筆と比べてコシが強いものが多く、
これにばかり慣れてしまうと、
筆に変えた際に柔らかい毛筆が
使いづらくなります。
近年では動物の毛を使用した
高価なものも作られていますが、
一般的なものはほとんどがナイロン製です。
筆ペンの染料
最初に話した通り、市販されている筆ペンは、
墨ではなく、インクが使われています。
・顔料インク
水に溶けやすい。乾きが遅い。
・染料インク
水に溶けにくい。乾きが早い。
・墨液
本物の墨液が入っているものもあり、
値段がグッとあがります。
ただ、品物に墨液と書かれていても、 実際はインクの場合がありますので
購入の際は裏の説明書きを
よく確認してください。
カートリッジ式になっているものは、
穂先がダメにならなければ、
取り替えながら長く使っていけます。
色
水墨画は墨の「黒」を
水で薄めて色合いを変えていきますが、
筆ペンは、濃いインクと薄いインクとで
別々に販売されています。
・真っ黒なもの。
墨でいうところの濃墨(のうぼく)
・灰色っぽいもの
墨でいうところの薄墨(うすずみ)
・朱色なもの
墨でいうところの朱墨(しゅずみ)
・多彩なカラーバリエーションのもの
他にもいろんな色のものが出ています。
ちなみに薄墨仕様のものは、
葬儀などの香典を書く際に、
「涙で墨が薄れてしまいました」
という意味合いで使ったりします。
日本らしい発想ですね。
筆ペンで描いた絵と、筆で描いた絵の違い
実際に竹を描いて比べてみました。
筆ペンで描いた竹
基本、線画になります。
濃い色のものと薄い色のものを
使い分けて描くやり方になります。
筆で描いた竹
薄墨と濃墨を穂先に作り、
筆を寝かせて筆の「面」で
一気に描いていきます。
筆ペンで描いた場合とは違って、
滲みや濃淡の技法により、
水墨画ならではの味わいが出ているのが
わかると思います。
まとめ
今回話したのは、
- 筆ペンについて
- 筆ペンで描いた絵と筆で描いた絵の違い
についてです。
筆ペンも性能が良いものは
とても描きやすいですし、
本物の墨(墨汁)が使われているものもあり、
あえて筆ペンで作画を楽しむ方法もあります。
そういったことを教える先生もいらっしゃいます。
ただ、「やれる範囲」や
表現できる幅が狭くなるので、
やはり水墨画を描くならば、
まずは墨を擦り、濃淡を作り、
筆で描いていくことをおすすめします。
そしてその世界を知った上で、
筆ペンでの作画をすれば、
きっとまたひとつふたつ
質の高い絵が生まれるはずです。
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