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消防車などなかった時代の火の消し方
これは江戸時代の悲しい恋の物話。
その日江戸の街では、
放火の罪を負った
当時18歳の八百屋の娘お七が、
市中引き回しの上、
火あぶりにて死刑となりました。
放火は当時は大罪。
不始末で火をつけてしまった場合でも、
同様に大罪とされていました。
それだけ火事が起きるということは
当時は大変なことだったのです。
今でこそ消防車がすぐ駆けつけて、
ホースで水を撒き
消化作業をしてくれますが、
当時はそんな技術はなく、
やれる最善のことといえば
周りに火が移る前に
その家を壊すことくらいでした。
燃え移ればその家も壊されます。
それもまにあわずに燃え広がれば
あっという間に街がなくなります。
そういった江戸の大火のひとつ、天和の大火が
今回の八百屋お七の物語と
密接に関係しているのです。
再会は叶ったのか、叶わなかったのか
さてそのお七に放火をさせたのは
若さゆえのそのまっすぐな恋心でした。
お七は一年前、火事で家族共々、
近くのお寺に避難しました。
寺には寺小姓という雑用係の男子がいます。
まあお坊さんと男同士で
あんなことやこんなことをする役目の場合も
多かったらしいですが。
すぐにお七とこの寺小姓は、恋に落ちます。
寺小姓の名前は庄之助。
時を見てお七は雷の鳴る夜に
庄之助の部屋へ行き
夜を共にしました。
時が経ち、お七一家は寺を出て
新しい家へ。
二人は引き離されてしまいます。
あの人に会いたい
今すぐにでも会いたい
胸が苦しい
どうすればいいの
どうすれば会えるの、、、
悩んだ末にお七が思いついた方法は、
放火でした。
家がなくなればまたあの寺に世話になり、
庄之助にも会えると。
そして新しい自分の家に、自ら火をつけたのです。
江戸の世では、放火は大罪。
捕まれば死刑。
お七はそれを知ってやったのか。
本当に知らなかったのか。
相手の庄之助は、その時病に伏せていて、
お七が死刑になったことも
しばらくは知らなかったそうです。
純粋無垢は、知恵をつけず疑わず
お七の放火もぼやで済んでいるし、
誰も怪我一つしていないのに、
もちろんやったことは悪いのですが、
読んでいてなんとも責める気にならないのは、
お七が純粋すぎるゆえの
「無知」だったからなんでしょうかね。
純粋すぎる人は、誰かを疑ったり
知恵をつけたりしないものですから。
お七辞世の句
世の哀れ 春ふく風に 名を残し おくれ桜の けふ(今日)散りし身は