再訪を誓った松蔭寺|雨の中を独り辿った帰り道

初めまして。
水墨画家の八束徹です。

水墨画の有名画家の1人に
白隠慧鶴(はくいんえかく)
という人がいます。

白隠は日本仏教のひとつ、
臨済宗のお坊さんであり、
仏教の教えを庶民に伝えるために
水墨画を描いた人です。

そんな白隠が誕生した地、
そして最後に住職を勤めた
松蔭寺のある地、
静岡県沼津市まで
ツーリングに行ってきました。

この記事では、

その松陰寺へのアクセス、
松陰寺参拝、
そして白隠の墓参り

について話していきます。

私にとっては、聖地巡礼の旅でした。

天候は曇り後雨。
風はなし。

禅画〜白隠が布教のために水墨画を描いた理由

臨済宗は禅宗のひとつ。
禅画と呼ばれる名称は、
そこから来ています。

白隠禅師は前述したように、
臨済宗のお坊さんです。

仏教をわかりやすく伝えるために
その説教を絵に
して、
実に1万点以上を描いています。

字を読めるのが当たり前の
現代とは違うので、
伝達手段として
絵は重宝されていたのですね。

なので白隠の作画は
「画家として成功したい」とか
そういう想い・目的から
始まったものではなかったのです。

ただ人のため、
人を救うためと描いた絵が、
だからこそ今でも愛されて、
現代へ受け継がれてきているのです。

松蔭寺について

松陰寺は臨済(りんざい)宗系の、
700年の歴史を持つ寺院です。
地元では白隠さんと呼ばれ親しまれる、
白隠禅師ゆかりの寺。
山門と山堂が国の登録有形文化財、
自画像や経本などが
静岡県指定文化財になっています。

お寺は旧東海道沿いにありますが、
お墓詣りに来た檀家の家族連れが
寺の敷地に車を停めていたくらいで、
観光客用の駐車場などは
ありませんでした。

私は寺の隅っこにバイクを停めて
参拝して来ました。

車だと行きづらいかもしれません。

観光での訪問は電車やバスが便利かつ、
檀家の方々への迷惑も避けられるのでは
というのが私の考えです。

なんというか賑やかに騒がしたくはないなあ、
とそんな気持ちになる古刹でした。

*古刹(こさつ)=長い歴史を持つ由緒ある寺院

松蔭寺参拝〜聖地巡礼

境内は本当にこじんまりとしていて、
予想していたような「観光客向け」の
つくりではありません
でした。
民家の中にひっそりと静かに、
そして凛として、
あるべき姿をしてそこに佇んでいます。

少し見て回ると、観光気分は
あっという間に終わります。

境内の写真を見ると、
とにかく綺麗にしてあるのが
わかると思います。
並んだ松の景観も素晴らしかったです。

整理整頓は心の状態に繋がります
なんとかあやかって
普段の暮らしも変えていきたいところです。

白隠の水墨画を展示しているような場所は、
寺院内にはありませんでした。
ちょっと、、いやだいぶ期待していたのですが
原画を拝観することは叶いませんでした。

やはり展覧会などで観るしかないようですね。

白隠の墓前で祈る

奥に行くと墓地が広がっていて、
お盆の墓参りの家族連れが
ちょくちょく訪れていました。

よそ者がその土地の住人の先祖が眠る
墓地に入るのは、どうしても気が引けます。

なのでなるだけ静かに、
白隠禅師の墓を探し歩きました。

そして私は、いつか手を合わせたかった
白隠禅師の墓前に辿りついたのです。

見るとその墓前には、
しゃがみこんで掃除中の
現住職がおられました。
声をかけようかと迷いましたが、
仕事の邪魔にならないようにと
少し離れて手を合わせました。

どうか私の画家としての成長を
お見守りください、と願いました。

その祈りの狭間で、先ほどの住職が
黙々と作業を続けておられました。
そのお顔はとても穏やかで優しそうで
私の気持ちをわかってくれているような
不躾にもそんな心持ちになってしまいました。

きっと白隠禅師もこのご住職のように
高潔な人だったに違いない
そんなふうに考えていたら
「絵がうまくなりたい」などと願う心が
必要以上に俗なもののように思えて、
私は萎縮してしまったのでした。

白隠禅師がその絵を通して
人々に伝えたかったその想い
それに対して私の信念などは、
その足元にも及ばないのだと。

まとめ

憧れの画家・白隠の眠る地。

ここに来ることで
画家としての力をもらえる
そんな願いを胸に辿りついた
曇り空の晩夏の午後。

どうしてもそう思い込みたかったけれど、
ここで白隠禅師が教えてくれることは
そういうことではないのではないか。

そんな思いが胸の真ん中を曇らせる中、
千本松原へバイクを走らせる私の肩に、
やがてポツリポツリと
雨が落ち始めたのでした。

きっと私はまたここに再訪しなくてはならない

そんな想いに駆られながら。

▶︎静かな手紙をお送りしています
ざわつく日々に、墨の余白と灯火を。