初めまして。
水墨画家の八束徹です。
神奈川県伊勢原市にある日向山。
その山中に宝城坊という
真言宗のお寺があります。
中世から薬師如来が祀られて
信仰されているため、
日向薬師と呼ばれています。
今回はその歴史と自然の素晴らしさに触れ、
色々と学び考えることができた
バイク旅となりました。
天候は晴れ。
風は少し強め。
目次
日向薬師|参道を行く

小さな出会い〜参道をゆく

駐車場で私の隣にロードバイクを停めた
男性が話しかけてくれて、
「参道を行くならこっちですよ」
と親切に道を教えてくださいました。

やはり山の参道なだけあって
綺麗に舗装された気楽な道では
ありません。
しかしながら、天候に恵まれたおかげで、
木漏れ日を浴びながら
ゆっくり登ることができました。
少し強く吹く風も
心地よく私の体をなぞっていきます。
石を歩きやすいように削ってあったり、
当時の人達の思いやりが
随所に感じられる参道でした。

今の時代(まあ私もバイクで
参道の入口までは来たわけですが)
辛い思いをして
長い日数をかけて歩かずとも、
昔の何倍もの速さで
目的地に辿り着けます。
そんな中、自らの足だけで
こんなふうに息を切らしながら、
楽ではない坂道を登り、山門を潜り、
そんな方法で境内にたどり着くからこそ
気づくお寺の有り難さというものが、
そこにはあるような気がしました。
それは、昔の人はそうするしか
なかったからだとか、
そういうことではなくて。
今でもこうしてここにお寺が
存在し続けているということは、
きっとそれは現代に受け継がれてきた
大切なことなのではないでしょうか。
そんなことを考えながら
歩いているうちに、
木漏れ日の参道はやがて、
最後の階段に到着しました。

境内へ到着〜お参り

階段を登り切って門を潜ると
まず右手前には定番の手水舎があります。
お参り前に手や口を清めるものですね。


そのまま右の突き当たりには
梵鐘(ぼんしょう=かね)があり、
その隣には虚空菩薩像が
木の空洞の中に祀られていました。
手を合わせます。

本堂手前には、
蝋燭の灯火を納めるガラス戸の箱と、
線香を立て納める香炉があります。
ところが備えつけのマッチの火が、
風の強さに負けてすぐ消えてしまいます。
仏様の目の前で諦めたら
何も叶わない気がして、
なんとか火をつけて香炉に納めました。
そしてまた手を合わせました。
宝殿拝観〜あなたの干支は?

宝殿内は写真撮影禁止なので
中の写真はありませんが、そこには、
薬師如来坐像と両脇の日向菩薩、
月光菩薩、阿弥陀如来を囲む四天王と十二神将、
と国宝がずらりと並んでいました。
中央の本尊薬師三尊像のご開帳は、
正月三が日などに限定されていますが、
上記の像を見るだけでも
かなり見応えがありました。
十二神将はそれぞれ
干支を司っているのですが、
一緒に受付の方の説明を
聞いていた他の男性客が、
「辰はどれですか?」
と私の思いを代弁するかのように
尋ねていました。
そしてそれに合わせて身を乗り出した私に
反応していたので
間違いなく私達は
辰年同士だったのでしょう。
威風堂々とした十二神将の像を観ながら、
これを絵に描きたいという衝動に駆られました。
こうも胸を打たれてしまうと、
こういったものを描きたくなる人の気持ちが
なんだか理解できるような気がしました。
見ると聞くのとでは大違い、
というわけですね。
なんにせよ、この宝殿の拝観が
私にとって300円以上の価値があったことは
言うまでもありません。
おみやげ屋さん〜山腹でお茶を飲む

心が洗われたような感覚の中、
宝殿を後にしました。
その先にはおみやげ屋さんがあり、
老夫婦(多分夫婦)が、営んでおられました。
茶屋風で、実際にお茶と和菓子で休憩もできます。
サービスでお茶を配っていたので
いただきました。
山腹で飲むお茶の味はまた格別です。
観光とお参りを済ませた帰り道、
よいしょよいしょと声をかけあいながら、
楽しそうに、けれど一生懸命
参道を登ってくる母と幼子。
彼女らが幸を授かりますようにと
すれ違いざまに祈りました。
まとめ

日向の野辺では秋になると
彼岸花が群生するそうです。
参道を案内してくれた紳士が
教えてくれました。
さぞ綺麗なことでしょう。
また秋頃に、走りに来るのもいいかな。
本尊のご開帳に合わせて
正月に来るのも捨てがたいな。
そんなふうに次の夢を練りながら
エンジンをかけて、
見上げれば椿の花が揺れる、
そんな2月の日向薬師を後にしたのでした。



