【孤独の歌】自作の歌詞とその背景を綴る第5話〜東京

生まれ変われる気がした、都会での新生活

東京に出て来たばかりの私は、

本当によく喋りました。
うるさいくらい喋りました。

「大嫌いだった田舎から解放された」
「地獄のようだった学校生活から解放された」

そんな思いが、私を必要以上に陽気にさせました。

初めての都会生活に興奮し、
田舎者丸出しの垢抜けない格好で、 
新しく出来た私の過去を知らない友人達と
あちこち飲み歩きました。

そしてどこにでも馴染める人間のように振る舞い、
周りを笑うようにもなりました。

ほんの数ヶ月前まで
人を笑う人間を忌み嫌っていたくせに。

後に、この時期にできた友人に言われた言葉で、

「お前はよく普通普通って言うけど、普通ってなに?」

というものがあります。

普通はこうだよな
普通はああするよな

よくこんな風に他人を、見えないところから
ジャッジしていたからです。
偉そうに。

それは学生時代の自分を笑うのと同じことでした。

自分は普通だからあいつはおかしいと否定して、
「周りから浮かない自分」を、
作り上げようとしていたのです。

そんな安っぽい自分をかばうようで
不快感を与えるかもしれませんが、

その時の私は、あの頃の自分を忘れたかったのですね。

嫌われ者だった学生時代の自分を。

そこで生まれ変われるような気がしていたのです。
違う自分を作り上げたかったのです。
心のどこかで憧れて求めていた、
みんなに好かれる自分の姿を。
愛される自分の姿を。
夢を追う自分の姿を。

故郷で得た、

人と馴染めない
どこにいても浮いてしまう嫌われ者

そのステータスを抹殺できると信じて。

しかし現実は違っていました。

一歩引いて見た自分の姿は、
田舎にいた頃と何も変わってはいませんでした。

何よりも一番変わっていなかったものは、
自己評価〜自分へのジャッジでした。

このジャッジはその後長く、
自らを縛ることになります。

東京

親元を離れ 東京へ来て 仕事に追われ
身体を休める暇すらない 苛立ちの日々
ただの甘ったれた子供かもしれない 目をそらして
他人の心の中にまで危害を加えて

お前も居なくなって ひとりぼっちで意地を張って
強さばかり身に付けて 心を隠し続けて
束ねた夢にこの身を捧げた振りをしている
あの日以来立ち止まったままの少年

愛したくないはずなどないんだ
けれど温もりにさえ牙を向けてしまいそうな東京

繰り返す嘘や裏側の脆さ 剥き出しの感情
もて遊ぶ人生 笑い顔と心の傷
どうでもいいことばかり覚えて 頷いてみて
気が合うとか合わないとかの問題じゃなくなる

風が吹いて身を任せて 一瞬にして消える
きっと誰かが言っている陰口に怯えてる
そして今日もまずい夕食を部屋でとって
この街でどうやれば自分らしくなれるか考える

俺は負けているのか 答えてくれ
未来などまるっきり見えず 不安にかられていく東京