固形墨の魅力|松煙墨と油煙墨が生む表現の違い

はじめまして。
水墨画家の八束徹です。

墨は原料によって変わります。
おおまかには3つ。
同じ黒でも原料によって
発色や味わいが変わってきます。

この記事では、
固形墨の種類、製造過程、金額、
新墨と古墨、
について話していきます。

固形墨の種類

①油煙墨(ゆえんぼく)

主に植物油(菜種油が最適とされる)を
燃やしてできる煤(すす)から作られます。
原料が菜種油なら茶系の黒、
椿油なら紫系の黒と、
使う油によって変わってきます。
イメージとしては、光沢が出る分、
強く存在感のある黒です。

②松煙墨(しょうえんぼく)

松の木片を燃やしてできる煤から
作られます。
最初は茶系ですが、
古くなると青っぽい黒色を
出すようになります。
イメージとしては、光沢があまり出ないので、
優しくもの静かな黒です。

③洋煙墨(ようえんぼく)

石油石炭などの煤に、カーボンブラックや
コールタールなどを加えて作られている墨です。
安く流通している墨はほとんどがこれです。
上記2つと比べて品質は落ちます。

油煙墨や松煙墨ができるまで

材料を燃やして煤を作り、
湯煎した膠(にかわ)を混ぜ合わせます。
(膠とは動物の皮や骨からとられるもの)
それに香料を加えて練り込んでいきます。
香料は、梅花(ばいか)、麝香(じゃこう)、
龍脳(りゅうのう)など。

香料を加えるのはなぜかというと、
独特な膠の匂いを消すためです。

「墨をすり、心を落ちつかせる」

というのはこの香料の効果によるものです。
ようするに、墨の匂いというのは
その香料の匂いなんです。

そして、型を取り
二か月以上しっかりと乾燥させ、
乾いた音がするようになれば、
品名などを入れて完成です。

良い墨はこうして職人さんが
手間暇をかけて、作っています。

なので良いものは当然高価になります。

それから煤を作るための
油や松も種類があるので、
材料の貴重さでも価値は変わってきます。

膠が枯れる〜新墨(しんぼく)と古墨(こぼく)

できたばかりの墨と
完成後何年も経った後の墨では、
品質が変わります。

墨を作る時に必要な膠の量では
そもそもの膠の強さが目立つため、
できたばかりの新しい墨は
その分描いた時に粘りが出ます。

この膠は時間が経つと成分が弱くなり、
これを「膠が枯れる」というのですが、
そうなると原料とのバランスが取れて、
描いた時の墨の広がりが良くなります。

淡墨作品
(薄い墨や水を使い、
にじみ、ぼかしを多用する作品)
を描く際には
ぜひ古墨を使いたいところです。

新品を買ってから、あえて
2〜3年寝かせておく方法もあります。

発色の違いについて

先述した通り、
黒といっても色々な色があります。

何を描くかで使う墨を
変えたりする画家もいますし、
自分の絵の特色に合わせてどちらかの墨を
メインに使ったりする場合もあります。
私も今は油煙墨メインですが、
初期に毎日使って小さくなった墨は、
書道家だった祖父が
生前に購入した松煙墨でした。
こんなふうに「心」が決める場合もあります。

道具との縁というものですね。

墨も品質にばかりこだわるのではなく、
そういった出会いに寄り添っていくのも、
絵を描く心を育んでくれるものです。

まとめ

今回話したのは、

  • 墨の種類
  • 固形墨ができるまで
  • 新墨と古墨
  • 発色の違い

についてでした。

墨のみと言わず、道具との出会いもご縁。

あなたが水墨画に興味を持って
この記事を読んでくれたのもご縁です。