音楽と水墨画のコラボ|CDジャケット制作の舞台裏|DAKOKU『瞬景』

初めまして。水墨画家の八束徹です。

前作「月光」に引き続き、今回もDAKOKU様よりご依頼いただき、
ジャケットとレーベル、そして隠し絵の3点を担当いたしました。
発売日は2025年7月30日となります。

この記事では、

ピアニストDAKOKUの紹介
受注の流れ
作画
アルバム−瞬景–

について話していきます。

依頼元DAKOKU様
依頼内容CDジャケットとCDレーベルに使用する
水墨画イラスト
媒体和紙(半紙)
受注数3
制作時間10日ほど
サイズ半紙サイズ
納品形態原画をデザイナーさんへ送付

ピアニストDAKOKUについての簡単な紹介

様々な「感情」や「情景」が、極めて自然な形で聴く者の脳裏に広がる。イージーリスニングやミニマルミュージックといったジャンルの要素を反映させながらも、 いずれのジャンルにも収まりきれない印象を受ける楽曲達。
独特なメロディーセンスと構成感、ドラマ性。癒しを求める現代にマッチングする音楽世界。聴く者の居空間を演出する、サウンドスケープ的なアプローチ。

https://dakokumusic.com

▶︎[詳細はHPをご覧ください]

ご依頼受注の流れ 

前回のアルバム-月光-に引き続き、セカンドアルバムの作画をご依頼いただきました。
まだ肌寒い春先にいきなり電話が来て「今回もお願いします!」と。彼らしい一言からこのストーリーが始まりました。

今回は私の感性に任せ切るのではなく、先にアルバムコンセプトの提供があってからの作画となりました。
彼の深い想い(これについては最後の項で話します)を聞き、収録曲の一つである”不死鳥”というタイトルの楽曲に込めた想いを受け、それならばと、ジャケットはそのまま不死鳥を描くことになりました。
レーベルの絵はもう一つひらめきを得た”桜嵐”という楽曲から、そのまま桜を描くことにしました。
そして後日、もう一枚が追加となりました。

作画について

不死鳥について

不死鳥というものを描いたことがなかったので、まず不死鳥について調べることから始めました。そうすると、似たような生き物に鳳凰がいて、イラストサイトなどでは、この二つが混同されて描かれてるようなものも見受けられました。
不死鳥はエジプト神話が起源で、火の中で焼け死んで灰から再生する、復活や永遠の命の象徴であり、鳳凰は古代中国神話が起源で、雄と雌が一体になった高貴で得のある存在の象徴です。不死鳥は個人、鳳凰は国、という考え方もできるそうです。
そして鳳凰は再生はしないし、見た目もこの二つでは似て非なるもの。学びは真実を与えてくれますね。

さて、ではどう描いていくかです。水墨画ですから、色は使いません。
濃墨で力強さを出す箇所を「羽根」にしました。飛び立つ力を”再生”につなげたかったからです。
その羽根は裁き筆で一気に描き上げて、ほかの部分はあまり滲みを目立たせず、線画であえてシンプルに描きました。全体的に力強くしてしまうと、アルバムに収められた繊細な曲たちとぶつかってしまいます。

それから下記の絵につなげて桜も舞わせてありますが、もちろん再生の炎ですから、その美しいものを燃やすことはないのです。

さらに私はこの不死鳥を、とある人物と重ね合わせて描きました。
その話については、最後の項でお伝えします。

桜について

このアルバムに桜の木を一本丸ごと描いたり、そういう華やかさは不要です。
垂れ下がる枝と、舞い散る花びらを描きました。
そしてその景色の向こうに、もうひとつ、追加された絵が見つかります。
これはぜひCDをお買い上げいただき、ご自分の目でご覧いただけたら、幸いです。

今回、桜の花びらなど薄く描いた箇所が多く、デザイナーさんがスキャンの時に
ご苦労なされたという話を、後日お会いしたDAKOKUさんにお聞きしました。
しかし完成品は素晴らしい出来栄えとなっており、頭の下がる想いです。

DAKOKU -瞬景について

今回は原画提供後にDAKOKUさんと直接お会いしてお話をする機会があり、こちらの対談や画面の外での交流で、彼がこの作品に込めた想い、そして経歴、ストーリーを深く知ることができました。
このアルバムは彼のとても個人的な想いから生まれたものであり、そのシンプルなメロディが聴く人の心のひだに触れていく。そういう作品だと私は思っています。
それは才能が成す技であり、決して独りよがりはならない「一作品」にしっかりと昇華されたものです。

彼自身も公表しているように、彼の心の中には、亡くなった娘さんへの深い愛と、美しい思い出と、それ故の自己非難や懺悔があり、その悲しみや深い愛情がメロディの粒となって奏でられています。

今回の”不死鳥”も、そんな彼の娘さんを”再生する不死鳥”になぞらえて描いたものです。
水墨画の持つ消去法の描き方や、和文化の持つ侘び寂び、儚さといったイメージが、このアルバムに収められた楽曲と非常に心地よくリンクしていると私は自負していますし、良い仕事ができたと安堵しています。

そしてここからは私の個人的な彼へのメッセージなのですが____
お会いした時、この構図のもう一つの意味を私は伝えられずに帰ってきてしまいました。
やはり、面と向かっては言えなかった。

この不死鳥は、向かって左から右上へと振り返らずに飛んでいます。
そのまま行くと枠の外へと出ていってしまう。昇っていってしまう。そんな視線誘導にしています。
それがどういうことか、このブログは彼も読むだろうし、またあなたにも、その答えをはっきりとは伝えずにおこうと思います。
受け止め方はそれぞれ。しかし、大切なものはしっかりと強く優しく、再生されていきます。

これが今回関わった素晴らしいアルバム「瞬景」についての説明となります。
ぜひアルバムを手にして、あなたにもその不死鳥が再生していくものを感じていただけたら、「ジャケットも作品の一部」と言って迎えてくれるDAKOKU氏の想いに応えられたことになるのだと私は信じています。

まとめ

今回話したのは、

  • ピアニストDAKOKUについて
  • 受注の流れ
  • 作画
  • アルバム瞬景について

でした。

あなたの、愛する人に届けたい想いはどんなものですか?

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▶︎[1st album「月光」についての記事はこちら]

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ざわつく日々に、墨の余白と灯火を。