ついに評価を得た20年越しの芸術作品
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右側の豹の絵。
タイトルは「夜明け」です。
これが私の描いた絵で、
ハンガリーのブタペストの展覧会で
展示された時の様子です。
私の絵の前で記念撮影をする小さな子供。
写真を撮っているのは、
お母さんでしょうか。
真っ直ぐな目で、
向けられたカメラを見ていますね。
とてもいい目をしています。
この写真が私に力をくれました。
にらむべきは過去ではなく『明日』
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この豹の絵は、元々、
師である小林東雲先生が主催する公募展
「アジア創造美術展2019」
(2020年より「美は国境を越えて」に改名)
に出品、入選した作品でした。
先生の下で学び始めて1年半。
そろそろ描いてみようかとお言葉を頂き、
挑んだ作品でした。
全紙の大きさに描くのも初めてでした。
豹を選んだ理由としては、
まず、私が動物占いで黒豹だったこと、
そして実際の性格と占いが
一致しているかどうかは別として、
豹のあのひょうひょうとした姿と、
睨みつける強い目が、
人生に自信をなくしていた自分に
もう一度力を沸かせるのに
ぴったりだったのです。
自分のための歌を歌い続けた末に
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18歳で東京へ出てきた私が抱えていたのは、
筆でも墨でもなく、
歌を歌うためのギターでした。
しかしその音楽活動は、
特にプロになるべく
その活動を広げようとするものではなく、
お客さんのいないライブハウスやカフェで、
自分の思いを伝えるための歌を
ひたすらに歌い続けるというものでした。
その頃の私は、
それしか方法を知らず、
それしか知らない中で、
一生懸命でした。
自分のことを歌にしていただけなのですが、
嘘のない言葉を届けなければならないと
「明るい歌」「楽しい歌」という、
「受けるための歌」
を作ることだけは
絶対にしませんでした。
けれど、それを信じて
こだわればこだわるほど、
私の暮らしは暗い穴に
潜り込んでいくようでした。
それこそが芸術なのかもしれませんし、
そんなやり方を応援してくれる方も
いらっしゃいました。
とてもありがたいことですし、
感謝しています。
おかげで心が死なずに済んだのですから。
プロを目指すということはどういうことなのか
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カッコ悪い話なのですが、
ライブをすればチャージ代を取り、
CDを作れば値段をつけておきながら、
「金じゃないんだよ」と
気取って斜に構えて、
それがとてもかっこいいことのように
思っていました。
こんな経験があります。
商売をしている友人が、
バンドを組んでライブを行い、
盛り上がった様子をSNSに載せました。
それを見て私は
「どうせ遊びで歌ってるだけじゃないか」
そんな風に思ってしまいました。
けれど、それを逆にして考えたらどうなのか?
自分自身もライブをやれば
500円だろうが、1000円だろうが、
チケット代を取り、CDも売る。
それは真剣に商売をしている側からしたら、
「遊びで商売をしている」
ということにならないだろうかと。
ふと気がついて、
とても恥ずかしい気持ちになりましたし、
それがまた、
今までやってきたこと、
少しでも自信を持ててきたことを、
一斉に崩していく原因の一つになったのです。
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投げ出さなければ必ず道は拓く
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守り通す力もなく恋人と別れ、
故郷の家族を喜ばせる器量もない、
友人に恩も返せない。
なにせ、
まともな社会人としてよそおい生きるのには、
すでに限界が来ていました。
そういったこともそうですが、
何より、
私の歌が、
評価をされない。
ただうまい酒を飲んで歌を歌って
死んでいくんだとヘラヘラして、
誰にも知られないアーティスト。
それでいいと自分を騙しながら
やはり私は、
評価をされたかったのです。
芸術家として。
その残り火のような想いに従い、
歌がダメなら、
何か得意なものは何だろう、
そうやって始めたのが、水墨画でした。
もともと絵は好きでしたが、
初めに歌とどっちにするか決めた時に
歌を選んだからには絵は描かないという
無駄に頑固な考え方にこだわって
それまで封印していました。
それはあまりにもつまらないこだわりでしたが、
今このタイミングだったからこそ、
良かったのかもしれません。
すべてはつながっていますから。
水墨画の魅力とその理由
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絵といっても色々あります。
高校の頃は漫画を描いて
出版社に送ったこともありました。
けれどあの漫画を描く細かい作業が
どうしてもダメでした。
物語の勢いのまま描くことが、
プロセス的に難しいからです。
実際、以前から絵のジャンルで
一番かっこいいと思っていたのが、
水墨画でした。
なんというか、
瞬間的に物語を詰め込める、というか、
いさぎよさというか、
そういったものを感じていました。
きっと性格的に合うと思いました。
まあ、それができるようになるまでが、
大変なことなのだと、
習い始めて思い知るのですが。
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そして師匠の教室に通い始めて、
いろんなものを描き、学び、
1年半が経った頃に、
初めての公募展への出品となるのです。
描きあげたクロヒョウ〜本当に勝たなければならない敵は誰か
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敵は自分自身です。
この頃はまだ、
先ほど話したように、
アルコールに依存しながら、
友人のライブに不快になっているような、
そんな頼りない精神状態でした。
生きれば生きるほど潜っていく暗い穴は、
何も音楽だけの話ではなく、
私生活も同じでした。
大事なものをたくさん失い、
自信も失い、
散々な状態でしたから、
なんとかそこを脱出したいという
素直な気持ちだけが、
描く絵に力を与えたのだと思います。
だからこそ、
まだ負けてやるかよ!
そんな目で新しい朝を睨みつける。
そんな一匹の豹を描いたのです。
よく見ると、
その目は少しすねていて、
ああいう目にはしたくなかったのですが、
しっかり自己が投影されている。
隠せない。
これが絵の面白いところでもありますね。
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公募展の開催場所は、
六本木の国立新美術館。
初めての出品作品で入選して、
そこに飾られるだけで光栄でしたが、
なんと「特別賞」をいただきました。
そしてそれが関係者様の目にとまり、
他の作品達とともに、
ハンガリーへ行くことになったのです。
新しい決意と物語の始まり
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そこでようやく、
私の描いた作品「夜明け」は、
あの見知らぬ異国の少年と出会うのです。
これは私の勝手な妄想なのですが、
もしかしたらあの少年も、
あの頃の私と同じように、
周囲になじめず、
教室で孤立しているのかもしれない。
もしそうだとしたら、あの少年は、
私の絵に何か力をもらったのかもしれない。
だからああして記念撮影を
しているのかもしれない。
もちろん、すべて
勝手な想像でしかありませんが、
私が私の思いを込めた作品で、
誰かの役に立てるという
可能性を感じたのは事実です。
(その後、絵が売れていくたびに、
お客さんに頂く言葉が、
その可能性を現実にしてくれています。)
それと少しだけあの少年の目が、
幼い頃の私の目のようでもあり、
その真っすぐな目が、
画家として生きていこうという決意を、
もう一つ二つ、
固くしてくれたのでした。
民族博物館への寄贈
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同年、同国ハンガリーのケチケメート市にある
民族博物館にて行われた
水墨画展に同作品が招待されました。
師匠小林東雲氏を始めとする
多くの画家の作品に囲まれて展示され、
また多くの人の目に触れて、
楽しんでもらうことができたようです。
水墨画の良さを十分に活かした作品と
高評価をいただき、
なんと同博物館にこの作品を
寄贈させていただくこととなりました。
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手元に戻って来ることはなくなりましたが、
絵は自分の部屋を飾るために
描くわけではありませんから、
今後その機会のあるごとに、
人の目に触れ、
感動を与えられるのであれば、
作家としてこんなに嬉しいことは
ありません。
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私の物語は、
最高傑作を描き上げる日まで
続いてゆきます。