幼い頃、家族の中で
孤独を感じたことがあります。
同じ家に住んで、同じ食卓を囲んで——
それでも、心のどこかで一人だった。
それは寂しさとは違う。
もっと根源的な、何か。
家族がいる。
そばにいる。
声も聞こえる。
なのに、心の奥底で、一人だと感じる。
そんな感覚、覚えがありませんか?
目次
罪悪感を覚えていた

その感覚に、罪悪感を覚えていました。
「家族がいるのに、なぜ孤独を感じるんだろう」
「何か、自分が間違ってるんじゃないか」
だから、大きな船に乗ろうとしました。
家族という船に。
友人という船に。
誰かという船に。
一人じゃない、と思いたくて。
でも、大きな船に乗ろうとするほど、
苦しくなりました。
罪悪感から逃げるように他人に寄り添い、
また寂しさが増していく。
なぜか。
それは、そもそも大きな船など
存在しないからです。
暗い海をゆく舟は、誰の舟も一人乗りである

それは家族でも同じ。
家族全員を乗せる大きな船ではなく、
家族という呼び名の、
一人乗りの舟の群れ。
並んで航海しているように見えても、
それぞれの舟に乗っているのは、たった一人。
これは孤立ではありません。
分断でもありません。
ただ、事実です。
この事実を受け入れると、
不思議なことが起きます。
孤独が、苦しみではなくなる。
一人であることを、
誰かに説明しなくてよくなる。
「なぜ一人でいるの?」という問いに、
答える必要がなくなる。
誰もが本質的には一人だから。
その時初めて、孤独が美しく見えてくる。
墨で描く理由

私が墨で絵を描くのは、その孤独のためです。
墨のにじみは、完璧を求めない。
余白は、静寂そのもの。
その余白が、一人の時間と重なります。
家族という大きな船を描くのではなく、
一人乗りの舟を描く。
暗い海に浮かぶ、小さな舟。
それが、誰かの部屋で、静かな灯火になる。
「それでいい」と、無言で伝えてくれる。
あなたの舟は、一人乗りです。
それは、孤立ではない。
ただ、本質。
その舟に、小さな灯火を置いてほしい。
それが、私の水墨画です。



