地震を予知する?日本の国鳥・雉の鳴き声響く冬|雉始雊(きじはじめてなく)

こんにちは。
水墨画アーティストの八束徹です。

雉始雊(きじはじめてなく)とは、
オスの雉が鳴き始めるという意味です。

雉(キジ)は日本の国鳥です。

春先になると響き渡るその甲高い鳴き声。
キジが鳴く理由は他の動物達と同じで、
オスからメスへのアピール、
そして縄張りを守るためです。

この記事では、その雉始雊と、
今回描いた水墨画、

について話しています。

1月15日から1月19日頃の七十二候は、
小寒末候 雉始雊(きじはじめてなく)です。
二十四節気では、小寒(しょうかん)
その小寒を3つに分けたうちの3番目(末候)です。

雉始雊(きじはじめてなく)について

雉が鳴く理由〜地震も予知できる??

雉は北海道や津島列島を除いた
日本中に広く分布している留鳥で、
日本の国鳥に制定されています。

春先に響き渡る雉の鳴き声。

渇いた冬の寒空を突き抜けるような
その甲高い声が響く時、
それはオスの雉がメスの雉を求めて
自己アピールをしている真っ最中なのです。

オスの雉は顔に赤い肉垂れがあり、
濃い緑色の体と長い尾を備えています。
その目立つ姿は、
メスへのアピールのためのもの。
彼らはそれぞれがそれぞれに
自分の縄張りを持ち
春の繁殖期になると、
その自分の縄張りに入ってきたメスに
必死でアピールをし始めます。

その求愛はホロ打ちと呼ばれるもので、
広げた羽を激しく羽ばたかせて、
メスの気を引こうとします。
そしてその求愛にメスの雉が応えて、
雉の子作りが始まるというわけです。

どんな生き物でも、自分を大きく見せたり
派手に見せたり
して、
オスはメスの気を引こうとします。
これは人間でも同じですね。

雉が鳴く理由は他にもあり、
それは地震を感知した時

雉は足の裏で大地の振動を
すばやく感知するため、地震にも人間より
数秒早く感づくことができるのです。

雉がその声をあげるのは、
主に繁殖期の春。
この七十二候も、春を待つ人々の心が
作り上げたものなのかもしれません。

雉にまつわる言葉

雉は国鳥とされるだけあって、
人間によく観察されて、
その様子にまつわる言葉も
生まれて来ました。

例えば、

雉も鳴かずば撃たれまい〜

これは、余計なことを言ったために、
自ら不利益を招くことのたとえ。

ケーンケーンと鳴く甲高い目立つ声を、
余計な一言」に喩えています。

そして、

けんもほろろ〜

雉のオスはその縄張りを守るためならば、
自分より強い敵でも勇敢に立ち向かいます
赤い肉垂れがその象徴となっているため、
赤いもの(郵便局のバイクですら)を
敵とみなすことがあるくらいです。

そんな勇敢な心を持ち、
その派手な姿で頑張ってホロ打ちをしても、
メスには相手にされない場合があります。
告白が必ず成功するわけでは
ありませんからね。
喧嘩が強いから、目立つから、
必ずモテるわけではないのも
人間と同じです。

そうやって振られたりすることを、
雉の鳴き声である「ケーン」を引用して
けんもほろろという言葉が生まれました。

ちなみに、雉のメスは
子孫繁栄に忠実というか、
したたかというか、
多くのオスの縄張りを出入りするため、
一夫一婦制でもなければ、
一夫多妻制でもありません。

雉は乱婚になる場合が多く、
要するにメスもあちこちで子種を授かっ
子供を作るのです。

前述のオスの勇敢さと、
このメスの母性愛。
それこそが雉が国鳥に選ばれた所以なのです。

そんな雉のメスは、
火のついた野原でも逃げず、
焼け死んでも子供を守ろうとします。
その姿から「焼野の雉」という言葉も
生まれています。

水墨画で七十二候を描く〜雉始雊(きじはじめてなく)

日本では雉を国鳥に定めておきながら、
狩猟が許されていたりします。
狩猟のために放鳥されてきた
歴史があるほどです。

例えばもともと野生の雉は
北海道にはいませんでしたが、
狩猟のために放鳥されたことにより、
今では観測されるようになりました。

そんなわけで今回描いた雉は、
北海道で見られるコウライキジです。

コウライは、高麗のことで、
古に栄えた、朝鮮半島を統一していた
国のことです。
朝鮮半島は今でいうと
韓国と北朝鮮がある半島です。

なので日本に元々いた雉とは別です。

どちらにしろ、そうやって狩猟のために
放鳥されたコウライキジが、
北国で野生化しているというわけですね。


雉は飛ぶのがあまり得意ではなく、
大抵見られるのは歩いている姿です。

北国の雄大な雪景色の中を歩く、
コウライキジの姿。
気の遠くなるほど広がる白い世界で、
彼らも遠い春を待ち焦がれて
いるのかもしれません。

まとめ

今回話したのは、

七十二候・雉始雊
水墨画で描いた雉始雊(きじはじめてなく)

についてでした。

次の七十二候は、
大寒初候 款冬華(ふきのはなさく)です。

二十四節気は、大寒(だいかん)に変わります。