【孤独の歌】自作の歌詞とその背景を綴る第28話〜フィリカ(別バージョン)

さすらいの歌〜もう一度呼びかけた「フィリカ」

この歌の前に、
同じタイトルの歌をすでに書いていたのですが、
ライブではこっちのフィリカのほうを
いつも歌っていました。

同じ女性をテーマに描き直したものです。

フィリカとは花のことです。
フラワーアレンジメントでは、
メインの花としてではなく、
メインの花に添えるためにつかわれるものです。

そしてそれは私が持っていた
その女性のイメージでした。

けれどこの歌を書いた時点ではすでに遠い過去でしたから、
その女性一人に対しての恋心や思い出というよりも、
「郷愁」に近い気持ちで

ああ、フィリカ」

と歌っていました。

この頃は倉庫で朝から深夜まで働いていて、
入庫待ちの休憩時間に、誰も使っていない部屋で
歌詞を書いたのを覚えています。

この頃覚えたフォークリフトの運転も
結局ちゃんと免許を取らずじまいだったので、
無駄になりましたね。
まあ、遅刻連発でクビになったのですが、
なんとも思ってなかったなあ。
申し訳ないともつらいとも。
胸に残ることなど何もなかった日々でした。

まあ私にとって労働はほとんどそんな感じでした。
頭の中は歌のことばかりでしたから、
暮らしていく金が入ってくるかどうかにしか
興味がありませんでした。

そんな、夢を追って生きていた日々。
歌を作り、毎日ギターや歌の練習をして、
空席に向かって歌うライブ。
歌で暮らしていくためには
どうしたらいいのかと悩んでも、
お金を稼ぐための勉強を頑なに否定していた、
ただただ愚鈍だったフォーク青年の青春。

けれどきっとその青年は、
人生につまずき、打ちひしがれても
「歌」で自分を生かそうとしてただけなんだと思います。

歌っている時はなぜか優しい気持ちになれた。
ギターを抱えて歌い出せば、表現する力はひ弱でも、
ひねくれたねじれた、憎まれ口を叩く
そんな私はそこにはいなかった。

こんな私でも、歌えば自分を取り戻せるのだと。

それを誰かに与えたいとか、
同じように助けになりたいとか、
そう思えるほどの人間ではありませんでしたが。

頭の中は結局、自分のことばかり。
愛してよ愛してよ、と言うばかりのさすらいの歌。

故郷の雪景色を思い煩いながら
ノートに書きなぐった歌詞に、
ボブ・ディランのMr.Tambourine Manのメロディを拝借して、
生み出したのがこの歌です。

「連れていってよ」と。

フィリカ
ああフィリカ 隠せない痛みを包み込んでよ
君を思い出すために費やした時間もすべて
ああフィリカ 眠れない夜を振り払ってよ
そしてあの朝の光の中へ僕を連れていってよ

僕が覚えてきたことは全部話したけど
解き放たれることなんてない
時々喉に引っかかるけれど
他人のために準備した言葉ばかりじゃない
君ももうとっくに知っているだろう
僕らが見ていた夢は
壊れかけた街灯の灯りみたいに
頼りなくなってしまった
手を貸してよ もう一度だけ もう少しだけ
僕は彷徨い歩き疲れ切って
ひとりぼっちを思い知らされたんだから

ああフィリカ 隠せない痛みを包み込んでよ
君を思い出すために費やした時間もすべて
ああフィリカ 眠れない夜を振り払ってよ
そしてあの朝の光の中へ僕を連れていってよ

爪は欠け指はひび割れ 
身を守るコートさえ持たず
ブーツは雪に埋もれ足を取られ
歩くことができなくなっても
僕はもう知ってしまった
このかじかんだ手と運で
捨て去ることも守ることも生きることも
すべては個人の自由だった
降り積もる雪が 足跡を消してく
結局探し物の途中で起こった
ほんの些細な出来事でしかなかった

ああフィリカ 隠せない痛みを包み込んでよ
君を思い出すために費やした時間もすべて
ああフィリカ 眠れない夜を振り払ってよ
そしてあの朝の光の中へ僕を連れていってよ

列車が警笛を鳴らしながら
暗いトンネルへと入っていく
すれ違う人もない灰色の街には
静けさだけが漂ってる
誰の心にも届かない暗闇を
僕もまた 持っているよ
凛として耳を澄ましながら
僕はこの長い道のりをゆくよ
いつか約束の窓辺へと辿り着くつもりさ
君には似合わない摩天楼の空の下
僕は今でも夢中で歌っているんだよ

ああフィリカ 隠せない痛みを包み込んでよ
君を思い出すために費やした時間もすべて
ああフィリカ 眠れない夜を振り払ってよ
いつかあの朝の光の中へ君を連れていくから

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