【孤独の歌】自作の歌詞とその背景を綴る第27話〜夜の庭

この歌は、当時の恋人との
待ち合わせに使っていた
最寄駅へ向かう途中の、
暗く混乱している気持ちを書いたものです。

その人と出会う前の私は、
仕事もしたりしなかったりで、
金がなくなれば消費者金融から借りて、
返しては利子分以外はまた下ろして。
減らない借金に押しつぶされそうになりながら、
パチンコ屋に入り浸ったり、
図書館で朝から晩まで本を読んでいたり。

それでもギターを弾けば
歌は息をするように生まれてきたし、
客席はガラガラでも
月いちでライブ活動は続けていて、
そのことだけでギリギリ自分を肯定できる、
そんな暮らしをしていました。

そしていよいよ働くことから逃げられなくなって、
週6日、一日12時間以上を仕事に費やすような、
憧れの自由な時間とは真逆の暮らしを始めた頃、
彼女と出会いました。

しかし、相変わらず人を信じれない私は、
人の輪の中に入っていこうとせず、
彼女や、仲の良い友人に心を許すだけ。
離れたところで笑い声が聞こえてくると、
あいつらは私を馬鹿にして笑っているんだと。
それを確認したわけでもないのに
「馬鹿にしやがって。お前らなんかと仲良くするもんか」と。
自分の目つきが悪いくせに、目をそらされると
「また嫌われた」と。
唾を吐きながら、
ケッ、知るか。俺はお前らとは違う。
と距離を置く。

憂鬱で重くなるだけの心に
勝手に不幸すら背負った気になって、
見事な被害妄想の塊でした。

これは例の苦痛でしかなかった高校時代に
作り上げられた性格なのですが、
実際そこから抜け出すのに、軽く20年はかかりました。
学校を卒業してもまだ私の周囲には、
あの教室の白い壁がずっとありました。

ゆっくりゆっくりと、治っていったのですが、
それはまた別な話。

とにかく当時の私は、やっと出会えた
心を許せる恋人に会いに行く時でさえも、
ドアを開けて外へ出ると、道端ですれ違う赤の他人に
馬鹿にされているような気分になりながら、
必死で息を整えながら、
駅までの10分程度の道を歩いていったのでした。


辿り着くと彼女は、そんな不安定の私の腕を、
嬉しそうな顔でつかんできました。

煌びやかな夜の街で、
そこだけが私の「夜の庭」だったのです。

夜の庭
何かまた一つ 落し物をしてきた気がする
この暗い抜け道で
噴水の水は止まり 時計台は狂っていても たとえ 
目が見えなくても僕は このドアに鍵をかけて

誰が責めるの 何を咎めるの
君に会いに行くんだ 夜の庭へ
何を笑うの 何を戸惑うの
君と待ち合わせてるんだ あの夜の庭で

耳を過ぎる声は 雑踏にかき消され
君の顔さえ忘れてしまいそうで
僕のことなんか気にもとめない種類の人と
すれ違いながら僕は 後ろ髪を引かれつつ

誰が許すの 何を咎めるの
君に会いに行くんだ 夜の庭へ
何を守るの 何が壊れるの
君と待ち合わせてるんだ あの夜の庭で