【孤独の歌】自作の歌詞とその背景を綴る第16話〜雨の休日

憧れの人との20年越しの再会

22か23歳くらいの頃、私は川沿いの倉庫で
派遣社員として働いていました。

仕事が長続きすることはありませんでしたが、
この頃は倉庫仕事にばかり就いていました。
日払いや週払いなどで給料がもらえるからです。 
貯金もなくそれどころかマイナスな状況で、
家賃を遅らせながら暮らしているような男が飛びつく仕事は、
そういう仕事です。

ずっと暗い雨が続いているような暮らしでしたが、
私はそれに次第に慣れていき、
それが自然なことだと思うようになります。 
コミュニケーションの仕方もどんどん忘れていきます。

それでも若さゆえ理解を期待し、職場の人に
ライブ音源を聴いてもらったりもしましたが、

眠くなるねとか、暗いとか。

そんな反応ばかりでした。

それに限らず起こる、そういうことの繰り返しが、
世間との距離を広げて行ったのでした。

この頃よく聴いていたのが、リッキーリージョーンズの
Naked Songs Live And Acoustic
というライブアルバムです。

タイトルにアコースティックとある通り、
全編ほとんど彼女のギターとピアノの弾き語りで
繰り広げるライブアルバムです。
独特の歌声と(めちゃくちゃうまい)、洒落たアレンジの施された
ジャジーな楽曲が定評なシンガーソングライターですが、
私が初めて聴いたのがそのアコースティックアルバムなため、
印象は真逆でした。

弾き語りでの表現でここまでやれるのかと、
衝撃を覚えた記憶があります。
歌をやるのをやめようかなと思ったくらいです。

この歌は、そのアルバムでのリッキーの表現力に少しでもあやかろうとしながら、
その時働いていた倉庫で知り合い、想いを馳せていた女性を
モデルにして書いたラブソングです。

残念ながら、その女性とは
この歌のような関係にはなりませんでしたが。

後日談として、20年近くを経て、
私は運送会社で働くことになるのですが、
その仕事で携わる契約先の会社で、
その彼女とばったり再会したのです。

ただ大きな会社なので、昼休みにちょくちょく
見かける程度で、会話はしていません。
向こうも気がついていたようですが、
お互い、声をかけあうことはしませんでした。

なによりも、20年ぶりに会って、
久しぶりー?元気だったー?
なんてやるような、そんな男ではありませんでした。
少なくとも周りのイメージでは。
彼女の記憶の中でも同じだと思います。

誰だっけ?と冷たく言い放つ想像しか
人に与えられない男でしたから。


しばらくして私は現場が変わり、
顔を見ることはなくなりました。

20年前と同じように、歌だけが残りました。

雨の休日

今日はきっと一日中雨だね 
昨日からずっと曇ってたし
こんな日はひどく寂しくなるね 
もう少しそばに来てよ

子供の騒ぐ声も聞こえてこない
今日みたいな日は退屈してるんだろうね
あなたの予定も狂っちゃったね
たまにはおとなしくして家にいるのもいいんじゃない?

ねえ、どんなふうに私達 続いていくんだろう
きっと間違いなんかじゃないよね
こんなふうに静かにしてるのも

ずいぶん長い間待ってたんだ 
あなたなんかは笑うでしょうけど
他に手がないって思う時もあるの 
他にどうしようもない時がね

今年もまた雪が降るといいね
その時はまた二人で歩こうね
ちょっと気が早いかな まだ先のことだよね
私こんなことばっかり話してる けど大丈夫よ

ねえ、どんなふうに私達 続いていくんだろう
きっと間違いなんかじゃないよね
こんな話をすることだって

ずっとあの小さな落ち葉みたいに
ひとりぼっちで雨に打たれていたんだ
あれはあれで悪い気はしなかったけど
やっぱり戻りたいとは思わないな
やっぱり思わないよ

いつか空が何かを落としてくれるよ
だから気取ったりしないで笑っていてね
少しずつ変わっていくものだから
きっと良くなるはずよ 明日はもっと

ねえ、どんなふうに私達 続いていくんだろう
きっと間違いなんかじゃないよね
こうしてるだけで 暖かくなるんだから