【孤独の歌】自作の歌詞とその背景を綴る第6話〜夜の街

卑屈な心で甘い夢を手探りした夜

18歳で上京して過ごした半年間の会社員生活。

その生活で得たものは、新しい友人と酒の飲み方でした。
とにかく新しい生活に浮かれていた私は、
週末になると(週末に限らず)、

池袋に行こう
渋谷に行こう
新宿に行こう

と金がある限り飲みに出かけていました。
完全に田舎者の典型ですね。

まあそもそもお酒は二十歳になってからなんですが。


仲良くなった友人と呑み歩くのは、
それはそれで楽しかったです。
退屈だった学生時代への鬱憤を晴らすように、
酒を浴びていました。

この歌は、酔っ払ったそんな若造が、
歌舞伎町で知り合った女性と道端に座り込んで、
自分勝手な夢を見ていたある夜の歌です。

一丁前に、仕事がどうだの世の中はこうだの。
社会に疲れた自分を演出しながら、
かっこよく口説いているつもりでいました。

私はその当時、

絵を描くか、
歌を歌うか、

どちらにするか迷っていました。
未来をどう見据えるかを決めかねていました。

ただ東京に来たというだけのことで、
その決断を後回しにするほど浮かれていました。
いったんそれで満足してしまっていたのです。

あの忌々しい故郷にいなくて済むという状況が、
ある意味夢への到達ですらあるかのように。

そんなふうに浮かれていたわけですが、
結局浮かれていられるのは
仲の良い友人といる時だけでした。

会社の喫煙所ではうまく周りの話に入っていけず、

嫌われていたらどうしよう
あの頃と同じになってしまう
今こっちを見て笑った
絶対俺を馬鹿にしている
ふざけんな!
あんなやつ、高校の時のあの連中と同じだ!

そんな考えが常に頭の中でぐるぐる回っていて、
自分の中で敵がどんどん生まれてきてしまうのです。

やはりここも私の居場所ではない。

私は判断し、
冬のボーナスを引越し費用にして、
私は辞表を出し、会社をやめ寮を出ました。

次の仕事も決めずに。

「夢がある」

とは半分は言い訳でした。
ここから仕事を転々とする長くダサい人生が始まります。

仕事ぶりは優秀ではありませんでした。
なんとかその会社に置いてもらっている状態です。
ちなみにその後も「金のため」と割り切った仕事で
優秀だったことは一度もありません。

はたしてそんな男の口説き文句に、
「君」は頷いてくれたでしょうか。

救われるところがあるとするならば、
ただただその女性が優しかったということだけです。

夜の街

一週間の仕事を終え 憂鬱から抜け出す夜
溢れ返る人混みへと 臆病に溶け込んでゆく
傷ついた心癒す アルコールと開放感
終電もなくなる頃 君と出会う

どんなに騒いでも叫んでも 孤独はつきまとう
抱きしめた君の背中越しに 少しだけ心開いた夜の街

始発までの数時間 道端で夜明けを待つ
誰かのギターに耳を向け 寄り添い合う二人
毎日の苛立ちも嘘も あのまま忘れられそうで
だから君が頷くのを 待っていた

どれだけ信じても求めても みんな乾いていく
灯りの消えた後の寂しさも 君の残り香も包み込む夜の街