【孤独の歌】自作の歌詞とその背景を綴る第3話〜欠けた月

旅立ちへの不安を照らした月明かり

高校の卒業式まであとわずか。

夜も更けた田んぼに囲まれた細い道を、
私はリードを引きながら、
飼っていた犬の散歩をしていました。

周囲は静まり返り、見上げればただ
田舎の真っ暗い夜空に
月だけがぼんやりと昇っている夜。

多分、上弦を過ぎたあたりの月。

忙しなく前へ行こうとする犬に引っ張られながら、
そんな月明かりの下を歩いていました。

東京への就職も決まり、
退屈な高校生活ももうすぐ終わる。
都会に行けば、こんな閉鎖的な田舎で自分を殺しているよりも、
ずっと自由に生きられる。
都会ならばもっと個人を尊重してくれるはずだと、
夢を膨らませていました。

これは半分正しくて、半分間違いなのですが、
その頃の私にはわかるはずもありません。

やっと解放される。

上京は、ある意味、逃げ道の確保でもあり、
当時の私はそのことで頭がいっぱいで、
家族との別れにさえ、寂しさを感じてはいませんでした。

早く町を出たい。
こんなところにいたくない。
ひたすらそんな気持ちに支配されていました。

そのくらい、私には故郷が、
嫌で嫌で嫌で仕方ないものになっていたのです。
そしてただただ、旅立つ自分に酔いしれていたのです。

しかし、この夜は、月明かりの下で
感傷的になっていたんですね。
そうでなければ、出てこなかった歌です。

この歌は結果的にラブソングみたいになりましたが、
最初は散歩していた犬に語りかけたものでした。
(サビの部分から生まれたのです)

「この月のように、ぼんやりと、ふわっといなくなろう。」
「私を嫌うみんなが喜ぶだろう」

リードを強く引いて、犬と一緒に駆け足で家へ戻りました。
もうすぐ出て行く予定の生家へ。


あの夜、月がこっちを見ていたのかどうかならば、
きっとそっぽを向いていたことでしょうね。

欠けた月

目を閉じて 唇を素直に預けてくれ
悲しみは いつの日でも途絶えることはない

明日の光はまだ顔を出さない
欠けた月だけが二人を包み込む

マリー どんな時も君を離したくない
マリー 満月の夜には君を抱きしめていた

はにかんで笑う時も 涙を浮かべ怒る夜も
何もかも僕にとって 大事な優しさなんだ

この街で覚えてきたものを全部忘れてしまえば 
心弱さも消えるだろうか

マリー 誰よりも強くはなれないのに
マリー 夢を追うのはとても無理なことじゃないのか
マリー 負けないで 泣かないで 君一人で
マリー ケリをつける時期が来ても黙っていよう

マリー どんな時も君を離したくない
マリー 満月の夜には君を抱きしめていた