水墨画への感謝

独学で得られるものなど、たかが知れている

私が水墨画を始めるにあたって、
まず考えたことは、

お金を払って習いにいく

ということでした。

独学ではどうしようもないことは
長い音楽活動を経て思い知っていましたし、
まず、水墨画の世界自体が
右も左もわからな過ぎました。

何度か教室を回って体験学習をした中で、
私が選んだのは、
小林東雲先生の主宰する水墨画教室でした。

水墨画といっても
先生によって絵柄も違ってくるのですが、
選んだ基準はそこではなく、
先生との濃くて深いお話でした。

私が音楽をやっていることなど、
いろんな話を聞いてくれて、
そのことと、水墨画との共通点を
私に気づかせてくれたのでした。

今まで20年以上やってきたことを、
切り捨てずにつなげていくことができるのだと
私はとても嬉しくなったのです。

師を得るということの素晴らしさ

教室では、
墨の擦り方から
筆の使い方、
その他、たくさんの技法を学びました。

まずは四君子(しくんし)といって、
4つの対象の描き方を学びます。

水墨画の基本と言われているもので、

蘭、
竹、
菊、

上から、春夏秋冬の図柄です。


今でも、
初心に帰ろうと思う時には、
四君子を描くようにしています。

その後は先生の用意した題材を
技法を学びながら描くようになりました。

過去は無駄なのか?

一番嬉しかったのは、
私なりに歌と絵をつなげて、
歌で伝えたかったことを絵にしてみたら、

歌ではあまりいい反応を得られなかった
想い・気持ちが、

絵ではいい評価をもらえるようになったのです。

わかりやすく言うと
(もちろんそんなに単純ではありませんが)

正しくというか、
優しくというか、
前向きにというか。

そういった伝わり方をするようになったのです。

やってきたことに無駄などなくて、

それらを繋げることで、
大きく広がっていくのです。

感動が作品を産んだ

水墨画はいくつかの技法をうまく使い分けて、
引いて足して描くものです。
もちろんそれは技術に限った話なのですが、
ある程度技法を覚えると、
やはり勘違いをしてしまいます。

ささっと筆を割って寝かせて
こうしてこう描けば、

ほら、こうなるじゃん

となりがちですが、

たとえ整った絵が描かれていても、
心の届いていない手で動かした筆では、
人を感動させるものなど描けない
のです。

そういったことも
理屈ではわかっていたとしても
それが本当に胸に響いたのは、

水墨画をやり始めて
実際に描くようになり、
教室に通うようになったからです。

絵を始めてまだ1年たらずで、
20年やってきた音楽活動を
超える評価をいただくようになり、

それが少しずつ、
また私に前向きさを
取り戻させてくれました。

そんな中で描いた作品が、
先生の主催する公募展で
特別賞をいただいたのです。

初めての作品が海を渡る

そして、その絵は海を渡り、
ハンガリーで紹介され

あちらの博物館に
寄贈させていただくことになりました。

全ての展開が早く、
実感が湧かず、
今でも夢を見ているような気分になります。

こうして人の評価を得られたということ。
おかげで今までにない力を得られたこと。
今までに発揮できなかった
自分自身を改めて知れたこと。
自分自身に価値を見出せたこと。
芸術家としての一歩を踏み出せたこと。

全てがこの水墨画の世界に
足を踏み入れたからこそ
得られたもの
です。

人の評価を得る、
人に認めてもらう

これは、人の役に立ち、
喜んでもらえてこそ
のことだということも
水墨画の世界で学んだことです。

これからも挑戦を続け、
新しい絵を生み続けていきます。

この初心と感謝を忘れずに。