音のない雷、秋の「稲妻」。その名の由来は?|雷乃収声(かみなりすなわちこえをおさむ)

こんにちは。
水墨画アーティストの八束徹です。

雷乃収声(かみなりすなわちこえをおさむ)とは、
雷が鳴り響かなくなるという意味です。

秋の雷は、音もなくピカッと光る
稲妻と呼ばれるものです。
それはなぜ、「稲妻(いなづま)」と
呼ばれるようになったのでしょうか。

その答えは稲作にあるのです。

この記事では、その雷乃収声、
今回描いた水墨画、

について話していきます。

9月23日から9月27日頃の七十二候は、
秋分初候 雷乃収声(かみなりすなわちこえをおさむ)です。

二十四節気は、秋分(しゅうぶん)に変わります。
その秋分を3つに分けたうちの 1番目(初候)です。

音のない雷、秋の「稲妻」。その名の由来は?|雷乃収声(かみなりすなわちこえをおさむ)

稲妻の由来。雷との違いについて

ゴロゴロと物々しい音を鳴らしながら、
黒雲から放電する雷。
秋の雷は、夏のゴロゴロピカピカとは違い、
この秋の雲からピカッと光を放ち、
地球を突き刺す稲妻です。
稲光りとも呼ばれます。

稲妻は雲の中で音をかき消しながら放電し、
地面を突き刺す光の槍です。

一方、夏の雷は、雷鳴の名の通り
音を鳴らしながら、夏の積乱雲から
大雨を引き連れて大地を殴りつけます。

季語もそれぞれ違っていて、
雷は
稲妻はの季語になります。

その光の槍が稲妻と名付けられたのは、
それが稲の実る時期に
頻繁に起きていた
からです。
稲の実りと寄り添っているという意味で、
稲のつま(夫・妻=昔は配偶者のこと
を両方つまと呼んでいました)
と例えられたというわけです。

雷は神様の仕業?雷=神鳴り

古来、雷は神鳴り(かみなり)
という意味を持ち、
天の神様の仕業とされていました。

風神雷神の存在も、
それを証明しています。
たとえば、国宝にもなっている
俵屋宗達の「風神雷神図屏風」。

風神雷神が向かいあう、
圧巻の大作ですが、

その中で、風神は風袋から
風雨を生み出し、
雷神は、太鼓を激しく叩き
雷を起こしています。

この絵からも、
雷は神の起こすものと
信じられていた
ことが、
よくわかりますよね。

水墨画で七十二候を描く〜秋分初候 雷乃収声(かみなりすなわちこえをおさむ)

今回は雨と雷を描きました。

黒雲は、片隈にした刷毛を使って
描いています。
墨の濃い側と薄い側の位置を考えながら、
バランスを取りつつ塗り重ねていきます。

最初から紙に水を張って描くと
滲み方がなんていうか柔らかすぎて
「黒雲」って感じじゃなくなります。

雨模様は同じく刷毛で、
こっちは薄墨で描いています。
その後「墨が乾くのを待って」から、
胡粉(白色の絵具)で稲妻を描きました。

昔の話ですが、

雷の多い年は豊作になる

と信じられていました。
当時の農夫達は、稲妻を見ると
とても喜んでいたそうです。

稲妻が光れば豊作だと、
農夫の期待に、
雷神は応えたか、応えなかったか。

巡る季節にその姿を閉ざし、
神が天に戻るなか、
下界では稲刈りが始まっています。

まとめ

今回話したのは、

  • 七十二候・雷乃収声
  • 水墨画で描いた雷乃収声(かみなりすなわちこえをおさむ)

についてでした。

次の七十二候は、
秋分次候 蟄虫坏戸(むしかくれてとをふさぐ)です。