バイクで漂うソロツーリング〜沼津市若山牧水記念館(静岡県)

酒を愛した歌人、若山牧水。
その名を知ったのはつい最近のことです。

沼津に記念館があると知り、
ツーリングを兼ねて、行ってきました。

天候は曇り。
ライディング日和。

9月中旬。
服装は厚着でもなく薄着でもなく。

箱根峠と金木犀の香り

朝焼けを浴びながら、早朝に出発。

行きは下道でのんびり向かいました。

地図もろくに見ていない私は途中でようやく、
「ああ、箱根を抜けるのか」
と気づく始末。

行き当たりばったり感が好きで
あえてしっかりと確認しないので、
それはそれで楽しいわけです。
道を覚えてしまうまでは。

箱根の山に入ると結構な峠道が続きます。
いい写真を撮れそうなポイントがいくつかあったのですが、
初めての道でもあり、
走るので精一杯で止まれませんでした。
後ろから車も来ていましたし。

箱根は施設もたくさんあり、
時折寄り道したくなりますが、
グッと我慢して、予定通りに道の駅に到着。

素晴らしい眺めでした。
他のライダーもたくさんいました。

そして山に入る前からすでに寒さを感じていましたが、
結構冷えます。
まだ9月なのに金木犀の香りが漂ってきたくらいです。

一足早く、あの切なくなる感じを、
味わうことができました。
冷え込んできて、金木犀の香りが漂ってきて、
胸がキュッとなる、あの感じです。

千本松に囲まれた沼津市若山牧水記念館

若山牧水について

戦前に活躍した歌人です。
歌人とは短歌や和歌などを詠む人のことです。

「牧水」の名は自ら考えたもので、
「牧」は牧水の母の名前から、
「水」は実家の渓谷や雨などから取ったものだそうです。
これが私が牧水に惹かれた最初の理由でした。

宮崎で生まれ、早稲田大学を出て東京に住み、
のちには沼津の千本松に魅せられて、
沼津に一家総出で移り住み、
沼津を愛し、沼津で亡くなりました。

旅先で歌を詠む日々を続けていて、
旅の歌集も刊行されています。

酒豪家としても知られ一升瓶の酒を
一日で飲み干すくらいだったそうです。

亡くなった原因も、旅先での体調悪化と、
酒による肝臓への負担が重なったからでした。

享年43歳。

歌集もたくさん残していますが、
それ以外に、自らの歌を書にしたためた作品
(掛け軸など)も多く残していて、
私が記念館に行った最大の理由は、
それが見たかったからでもありました。

若山牧水記念館について

住所:〒410-0849 静岡県沼津市千本郷林1907-11
電話:055-962-0424
時間:9:00〜17:00(受付は16:30まで)
料金:大人200円、子供100円(小・中学生)
*沼津市内の小中学生は無料
*20名以上は団体扱いで2割引
休館日:月曜定休(祝日に当たる時はその翌日)と年末年始
行き方:沼津駅から記念館前行きバスが出ています。
    車だと沼津インターから20分、
    駅からだと5〜10分くらいですね。
    もちろん駐車場もあります。

バリアフリーになっていたり、
車椅子も貸し出していたりと、
気配りのされた施設ですね。

館内へ〜展示品の数々

庭の松に魅せられながら、館内へ。
入場料を払って展示室へ入ります。

展示室は狭いので、さらっと見るだけだと
あっという間に終わってしまいますね。
ガラス張りの向こうにあるので、
本をめくって観覧したりすることは当然できません。

飾られた写真に、
その精悍さ、愛情深さなどを感じてしばらく眺める。
綴られた経歴に、
自分とは違う人生を想像して、思いを馳せる。
自筆の原稿用紙に、
こういう字なんだ、結構可愛い字だなとか、
当時でも普通にひらがなと漢字で書いてるんだなとか、
展示品自体の古さに、歴史や時代を感じたり、
いくらでも楽しみ方はあります。

「想像力」を要求しない見世物が多すぎるんですよね。
けれど本当に楽しもうと思ったら、
自ら想像しないと損なんですけどね。

それはさておき、
私がその書物や写真の中で一番衝撃を受けたのが、

この絵でした。

四年生と書いてありますね。
当時のそれぞれ4年ごとの小学校では、
尋常小学校4年生なら10歳、
高等小学校4年生だとしても14歳です。

今と違って、当時は絵を描くならば
墨で描くのが自然だったのかもしれませんが、
それでもこのレベルです。
筆使い、構図、墨の濃淡などを
自然に使いこなしています。

お目当ての揮毫(きごう)作品も素晴らしかったし、
(*揮毫とはざっくりいうと筆で書いたってことです)
復元された書斎などは、
私もいつかこういう書斎を作ろうという
新しい夢を与えてくれました。

復元された牧水の書斎

展示室を出た先の本棚には歌集が並んでいましたが、
手に取ることはしませんでした。
立ち読みではなく、じっくり読みたいので、
後日通販で購入することにして。

展示室に入る時には気づかなかったのですが、
牧水の使っていた机と椅子が入り口にあり、
そこに座り、机に広げられた手帳に
自分の住所と名前を書くことができます。

筆ペンを借り、気持ちを込めて書かせてもらいました。

そして庭を散策しながら裏手に回ったところで、
裏門から堤防に続く道を見つけたのです。

広がる海と千本浜

生い茂る松を潜るようにして丘に上がると、
堤防の先に海が広がっていました。

松の周りには蜻蛉が何匹も舞い、
広がるその日の空は、灰色。
左手には沼津港があり、
浜辺には流木がたくさん打ち上げられていました。

もっと先、というか方向的には戻るって感じなんですが、
千本浜海岸と名付けられた海水浴地や、
千本浜公園があります。
千本浜公園には牧水の歌碑も建てられています。

しかし私は、その千本浜の外れの寂れた景観と
さっき見た牧水のいくつかの歌がリンクしてしまって、
綺麗に整備された場所へ行く気にはなれませんでした。

堤防に座り、しばらくその海を眺めました。

沼津の空の下で、静かに揺れている海を。
そして若山牧水がこの海を見ながら、
どんな風に心を動かされていたのだろうかと
ぼんやりと想像しながら。

雨〜急かされた帰り道

記念館を後にしたところで、
ぽつりぽつりと落ちてきた雨。

バイクを停めて、天気予報を確認。

降水確率が上がっていて、
翌日の予報に関しては90%越えでした。

港で海鮮料理をいただく予定でしたが、
雨に降られては困るので、
急いで高速で帰ってきました。

結局運転中に降られることはありませんでしたが、
帰宅後、しばらくして街は雨模様に。
バイクは雨が降ると危険ですからね。
こういう時は、さっさと帰ってくるか
諦めるしかないですね。笑


雨は予報通り翌日も降り続け、
私は雨の音を聞きながら、
久しぶりの日本酒に酔いしれています。

牧水ほどには呑めないけれど。