【孤独の歌】自作の歌詞とその背景を綴る第17話〜始発が出るまでに

夜の夢の終わりと、それから。

この歌は、今ではライブでアンコールをいただいた時に、
クロージングとして歌う歌のひとつになりました。

友人と朝まで飲んでいた時のことを
思い出しながら書いた歌です。
恋愛としてでも、仲間と飲み明かした夜としてでも
とらえられるように書いてあります。

しかし、書いた当時はライブでは、ほとんど
歌うことはありませんでした。

これを書いたのはまだまだ青臭い20代前半の頃。

書いたのはいいけれど、その当時の自分が
表現したいこととは違っていたため、
脇に追いやってしまっていたのです。

当時の屈折していた私が、
この歌を却下した理由はひとつ。
それはサビの

「わかりあうことはできないかな」

この部分が嫌だったからです。
自分で書いておいておかしな話ですが、
当時の私にこういう繋がりを望む気持ちがあったとしても、
その頃作るべきだと信じていた世界観の中の私は、
こんな台詞を言うはずなどなかったわけで、

言うとしたら、

「わかりあえるはずなどない」

でした。
こう歌うほうがしっくりくる人生でしたし、
歌い手として自分は、それを歌う人間だと
決め込んで生きていたのです。

その頃は、自らを守るために作った自分だけの世界の中で、
斜め後ろを向いて暗闇を展開するライブ活動を頑なに続けていました。
運良く持ち合わせた、人とのつながり、
もしくはつながろうとする心、
そういったところからふいに生まれる歌を、
片っ端から否定していました。

いつのまにか人と繋がることを
怖がるようになってしまっていたんですね。
思い返せば、高校時代のときすでに。

ちなみに、面倒なことに、一人でいるのが
苦手な性格ではないので、
自分でもどっちかわからなくなって
逆に無駄に悩んだりもしました。

やがて出会いや成長により、雪溶けはしていくのですが、
本当にゆっくりと進んでいきます。
10年、いや、それ以上を費やしました。
その冷たい雪が溶けるまで。

完全に溶け切ることはないとしても。

「明日へつながっていけばいいのに」

夢の終わりと、夢の始まり。
また明けていく夜明けに包まれて、心からそう願い、
そう歌えるようになるまでに。

完全にわかり合うことはできないことなど、
わかっているのです。
けれどそんなことは、どうでもいいことなのです。
心が動くということは、そういうことではないのです。

それに気づくまで本当に、長い時間を費やしました。
だからこそ間に合わなかったことが
たくさんありました。

始発が出るまでに

街灯にもたれた恋人達が でかい声で
愛を語り合いながら 慰めあっている
降りたシャッターの前で タバコをふかす連中は
終電を逃した寂しい女を 見つけようとしてる

ギターを抱えた誰かの声に 耳を傾ける者はなく
叫びは押し付けに変えられ 汗は乾いていく

始発が出るまでに 君と
わかり合うことはできないかな
今夜飲み明かした楽しさが
明日へつながっていけばいいのに

君のその笑顔に僕はまた どうしようもなく
不安を感じたりしてしまっているよ
僕達は気が滅入らないようにすることに 必死で
ただ取り留めもなく 喋り続けてる

同じ格好の少女達がさっきの連中と闇に消えていく
あと数時間で 僕達の夜が終わってしまうなんて

始発が出るまでに 君と
わかり合うことはできないかな
今夜飲み明かした楽しさが
明日へつながっていけばいいのに