水墨画初心者の方へ〜最初に揃えるべき道具

こんにちは。
水墨画アーティストの八束徹です。

水墨画は、簡単に言ってしまうと
筆と紙と墨があれば始められます。

しかし、水墨画は、筆、墨から始まり、
最後の篆刻(てんこく)までたどり着いて
完成型となります。


水墨画を描いて
人に何かを伝えたい自分の想い。

その想いを表現するためには
その絵を水墨画として
完成させなければなりません。

そのために必要になってくるものを
メインに話していきます。

基本的に動物の毛を
使用した筆を使います。

太筆と細筆。

よく名前のあがる道具としては、
付立筆、面相筆、隈取筆、連筆、刷毛筆、
などがあります。

まずは付立筆の
太いものと細いもの。
これから始めるのがいいです。
突き詰めると、
本当はなんでもありなのですが
(例えば、
割れて元に戻らなくなった
ナイロン筆で出せる味も
あるということです)、
初めは水墨画の基本を知るために、
トリッキーなことをするのは
後回しにしたほうがいいです。
まずは、筆で水墨画の技法を
身につけるのが大切です。

固形の墨

基本的には固形の墨を
擦って描きます。
写真は私が使い込んだもの。

墨には、
松煙墨(松の木片を燃やした煤と、膠)と、
油煙墨(油の煤と、膠)の2つがあり、
それぞれ特色が違います。
松煙墨は青く、
油煙墨は茶色く見えると
覚えておけばいいと思います。

もちろんどちらも黒には
変わりありません。

朱墨といって朱色の墨もあります。

墨汁/墨液

墨汁は、高価なものでないと、
なかなか水で薄まりません。

写真のは安価なものです。
どれだけ水を足しても綺麗に薄まらないし、
筆も洗うのも大変です。

基本的には使わないのですが、
硯の上の濃墨は乾きますから、
ライブペインティングなどでの

・その都度墨を擦っていては
パフォーマンスにならない、
・大きな紙に描くので
たくさんの墨を使う

こういった場合に必要になってきます。
その場合は当然、
水で薄まるレベルの
高価なものが必要です。

●膠(にかわ) とは、牛や豚、ウサギなどの
動物の骨皮から抽出した物質です。
膠液は、胡粉や絵具を
溶く際にも使います。

硯(すずり)

天然石、瓦、陶器、漆器、
意外にも木製のものもあります。
基本は、天然石製のものを使います。

プラスチックやセラミックのものは、
発墨が悪いのでおすすめしません。
ほとんどおもちゃみたいなものです。

彫刻つきだったり、
工芸品のような箱つきだったりして、
アンティーク品としての付加価値が
値段を品質以上に
あげてしまっている場合もありますが、
そういうのはどちらかといえば、
観賞用として飾るためのものです。

書道用紙/和紙

「水墨画は和紙に描く」といいますが、
和紙は日本で作られたから「和」紙です。
それが書道用紙になったり、
書画用紙になったりしているだけです。
書道用紙に描いても問題ありません。

和紙の原料は、
麻、楮、三椏、雁皮、竹などで、
墨の滲み、発色など紙によって様々です。

機械漉きと手漉きの違いもあります。
手漉きのほうが品質が良く高価です。
初めは練習用に、
機械漉きを使うという手もあります。

画仙紙

画仙紙は書画用とされている紙です。
中国の「宣紙」という高級な書画用紙のことを
「画仙紙」と呼ぶ場合があります。
ちなみにその最高級の画仙紙が、
紅星牌というものです。

二層紙

その名の通り、2枚重ねたもので、
厚みが違います。

私は、教室で使用する紙が
基本的に二層紙なので、
それに慣れたこともあり、
他で手に入れる際も
二層紙を探すようにしています。

和紙は、
この紙だとにじみが足りないな、
この紙だと滲みすぎるな、
などと千差万別です。
それから紙の大きさも、色々あり、
描く作品によって選んでいきます。
(半切、聯落ち、全紙、など)

鳥の子紙

墨が滲みづらい紙です。
簡単にいうとケント紙に描くような感じですね。
滲まないので、水を張った上に
墨を流すような技法で描いたりします。

色紙/短冊、葉書など

和紙が使われたものを使います。
100均などにあるつるつるのものではなく。

これも同様に、
にじみやかすれの具合が、
ものによって変わります。

小皿

これは100均に売っているような
もので充分です。
ただし、底がギザギザになっている
デザインのものはダメです。

筆の毛を寝かせて
全体が行き届くものを使います。

以下のような梅皿は
それには向いていないですね。

梅皿

下敷き

基本的に白を使います。
黒は透けて見えてしまい、
墨のにじみがわかりづらくなるためです。
高価なものはいりません。

写真は半紙用です。
もっと大きな紙に描く場合もあるので、
環境にあわせて、揃えていきましょう。

筆拭き

筆の水分や墨の含みを
調整する時に使います。
水分を多く含んだままの筆では
かすれは出せません。
吸水性のよいタオルもいいですが、
ティッシュペーパーで充分です。

墨池(筆洗い)

筆を洗うための容器です。
初めに筆に綺麗な水を含ませて
空気を抜く、
筆に水を吸わせる、
作画中に墨を付け直すために一度墨を洗う、
こういう時に使います。

もちろん水は墨で汚れていきます。
なので毎回取り替える人もいると思います。
それはその人や描きたい絵、
技法で変わってきます。
描き方や、作品次第ですね。

私はいちいち水を変えていると、
気持ちのスイッチが切り替わりそうなので、
描き上がるまでほとんど替えません。

これも本来なら白の方がいいですね。
そのほうが水の汚れ具合がわかりますから。

落款印

朱色の捺印をする石の印鑑みたいなもの。
ちなみにこの捺印のことを
篆刻(てんこく)と呼びます。

はんこやさんで頼んでもいいし、
教室によっては先生が
作ってくれたりします。
頑張れば自分でも作れるようになります。
至急必要というわけではないですが、
水墨画は落款を入れて完成ですので、
用意したほうがいいです。
描くものに合わせて、
異なる大きさのものが、いくつかあると便利ですね。

最後にどこに篆刻をするかで
完成度が変わってきます。
これで悩むのも、
水墨画の楽しみのひとつです。

朱肉

スタンプ用のスポンジ朱肉ではなくて
練り朱肉を使用します。
顔彩と油分が分離してしまうので、
時々ヘラや割り箸か何かで
その名の通り、練りましょう。

写真のものは安価なものですが、
展覧会に出したり、販売したり、
作品として仕上げる段階になったら、
高価なものを求めましょう。

その他、特に急がないもの要らないもの

胡粉/顔彩

水墨画の世界では
色付きの絵具を使い描くと、
墨彩画と呼ばれます。
胡粉(白)で雪を表現したりするだけなら、
墨彩画とは呼ばれません。

胡粉は別で買っておくといいです。
他の色は顔彩セットで充分です。

いずれにせよ、
しっかり色をつけてしまうと、
墨の濃淡による深みを失い、
趣きの違った絵になります。

文鎮

水墨画は余白も絵の一部です。

紙は筆を持たないほうの手で
押さえられますし、
余白を活かす水墨画では文鎮があると目障りなので、
私はなるだけ使いません。

霧吹き

水で紙を湿らせる時に使います。

額/掛け軸など

作品を飾りたい時は、
裏打ちも兼ねて、画材屋さんや
表装店さんに相談しましょう。
ネットで受け付けているところもあります。

自分でできるものとしては、
写真のような簡易的なものもあります。

いずれにせよ、
色紙や短冊など以外の紙に書いた場合は
以下の裏打ち作業が必要になります。

裏打ち用紙/道具

和紙は水分を吸うとくしゃくしゃになります。
なので、裏打ちという、
紙を厚くする作業が必要になります。
裏打ち機といって、専用の機械もあります。
10万円以上しますし、大きいです。

これもちゃんと飾ったり、
展覧会に出したりするわけでなければ、
考えなくていいです。
基本は表装屋さんや画材屋さんに頼みます。
何年も前に書いた絵を裏打ちしてもらっても
ちゃんときれいになります。
どのみち、額装も含め、絵とは別の技術です。
なので、無理に覚えなくていいです。
表装は表装のプロがいますから。

裏打ちと額装で1つのオーダーとする
表装屋さんもあります。
別でやってくれるか、
依頼する前に確認しておくといいです。

机と椅子

水墨画は、和室で正座して描いてるようなイメージですが、
座卓は腰を悪くするので、椅子のある机が望ましいですね。

あとがき

こうして書き並べてみたわけですが、
結構多いような気がしましたか?

しかし、とはいえ

墨を硯で擦り、
筆を取り水を含ませ、
墨を擦り小皿で薄墨を作り、
紙に絵を描き始め、
途中、筆吹きや筆洗いで
墨や水分を調整したりしながら、
描き上げたら、
最後に落款を押す。

この一連の流れの中に、
それぞれの道具が存在するだけです。

身についてしまえば、
「それだけのこと」です。
そして水墨画の深さを知れば知るほど、
「それだけのこと」が、
「楽しい」に変わっていきます。

絵の幅を広げるために使うものはまだあります。
そのあたりはまた別に記事で、
書いていきたいと思います。

あなたが水墨画の

「楽しい」

を、見つけられますように。